小寺信良のIT大作戦
ビジュアルアーティストの“作風”を保護する米国「CREATOR法案」とは? その建て付けと生成AI時代の課題(3/3 ページ)
この法案の意味するところ
一般的にAIとクリエイティブに関する課題は、ビジュアルにおける作風の模倣だけではない。それ以外のものも、作風の模倣として処理できる可能性があるだろうか。
例えばAIの声が俳優や声優の声に似ているという問題は、「作風の模倣」という範疇に入るのか。言葉だけのイメージで言えば、「声」は「作風」には入らないんじゃないかという気がする。どちらかというと、「容姿」など持って生まれた個性に近いため、パブリシティ権の問題のように感じる。
ディープフェイクの問題も同様だ。容姿を真似ているのであれば、やはりパブリシティ権の問題である。ただパブリシティ権は著名人でなければ認められないため、どこまで著名であれば該当するのかの線引きがある。
つまりこの法案は、これをもってAIに関する問題の全てをクリアできるというものではない。これまで著作権法でカバーされなかった部分に新しく権利を創出することで、ビジュアルという特定の表現に対して、さらに特定の問題をピンポイントでクリアするものだ。
複雑になった著作権法の改正をするのではなく、別の法律を作ったほうがシンプルに解決できるというのがこの法案の意図だ。また「AI法」のような網羅的な法律を掘りあげるのは大変なので、ちょっとずつ削ってここまでできましたと形にしていくほうが早いというイメージである。
一方で、作風というのは裁判所で確定できるものなのか、という課題もある。「Intentional Targeting」のように誰々の新作と偽ったのであれば即アウトだが、「Stylistic Impersonation」のように誰とは言わないが似てるよなー的な場合は、やはり翻案権侵害のような議論になるのだろうか。
他方で、完全オリジナルの作風であると人間側が主張できるのか、という根本的な課題もある。人間のクリエイティブの場合、過去に多くの作品を体験して模倣した結果、総合的に作風が形成される。自分は誰々さんから影響を受けてます、と公言するのは普通にある話で、それを完全オリジナルの作風であると主張しきれるのか。
ヘタをすればそれがきっかけで、原告が翻案権の侵害になるという藪ヘび状態になる可能性は否定できないではないか。あるいは○○派の表現とはそもそもこういうものである、と定義されてしまうと、オリジナルの作風云々という話ではなくなる。
これまでいろんな法律で「作風」というものを扱ってこなかったのは、自然発生的に生まれる権利の根拠としては微妙に確定できない、という面もあったのではないだろうか。ただ、何かを着手しなければ現ビジュアルクリエイターの利益が減少するのも事実である。
これから米国議会でどのように揉まれるのかわからないが、議論の中で「作風」というものがどのように定義されるのかについては、注目しておきたい。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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