小寺信良のIT大作戦
AI広告は受け入れられるのか? 最新調査から見えてきた近未来像(4/4 ページ)
AIクリエイティブの可能性と限界
今回の調査は、静止画におけるクリエイティブの話である。一方で現代の広告は、WEBを中心に動画広告へと傾いている。既に動画広告はAIを使って制作されるものも出てきており、我々も広告の一環として目にし始めているところだ。
AI制作の動画は、静止画よりはAIであることが発見しやすい。実写動画は連続性と一貫性が保証されているものであり、1カットの途中で物が消えたり、動き方が重力に逆らったりしていれば、それはAIだろうと想像が付くわけである。そうした動画を見るたびに、我々は本物ではないと判断し、本当にあった出来事ではないと確信する。
ただそれは、信憑性が求められるコンテンツである場合だ。例えばSFものや災害ものなどの映画・ドラマ作品は、最初からフィクションであると分かっているコンテンツであり、それが何で作られたかは問題にしない。実写やアニメの中に3DCGが入ってきても受け入れられてきたように、AI生成は表現手法として受け止められるジャンルは存在するだろう。
しかし広告の場合は、表現されているものが事実でないと困る。実際に販売されるものよりも過剰によく見えるのであれば、景品表示法における優良誤認表示に問われる可能性も出てくる。AI広告がそのラインを守らず無法地帯となるのであれば、AI広告であるということだけで商品価値が毀損(きそん)される可能性もある。
クライアントとしては、AIで制作するなとリクエストするだろう。だが全て実写撮影で人が全て制作すれば、コストがかかる。制作費圧縮のために、クライアントに黙ってAIを使う制作会社や制作者も出てくるだろう。制作側はAIを使っていないという証拠が必要になるが、それは果たして可能だろうか。
問題は、すでに映像制作ツールの中にAIが入り込んでしまっていて、AIを使わないでいることが難しいことである。どの部分までAIを使うことが許されるのかといった線引きをしても、そのラインでクライアントを説得できるかどうかは分からない。
AIを使う理由は、制作費の圧縮はもちろんあるのだが、第一の理由は「実写よりきれいにできて、コントロール可能」だからだ。広告特有のキラキラ感のある映像は、何度もテストして撮影されたものであり、複数素材の合成やカラーグレーディングなどの加工をしなければならない。それでも実写ゆえに、できることに限界がある。後から逆アングルがよかった、などと言われてもどうにもならない。
生成AI画像が広告価値を毀損するという調査結果は、広告業界にある種の爆弾を投げつけたに等しい。これをきっかけに、実写であることを主張したいクライアントも出てくるだろう。広告に「これは実写です」といったテロップを出さなければならなくなる日が来る可能性もある。
少なくとも広告は、消費者の信用に足るものでなければならない。多くのメディアをはじめとするネットビジネスが広告モデルで回っている以上、この前提は避けて通れない。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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