小寺信良の「プロフェッショナル×DX」

“全編AI制作”でコスト9割減を実現したViglooに聞く韓国ショートドラマ事情 「視聴者は制作方法で作品を選ばない」(3/3 ページ)

AI制作ドラマを鑑賞する

 Viglooオリジナルドラマで、フルAIで制作されたドラマ『ソウル:2053』を鑑賞してみた。気象災害によって荒廃した、2053年のソウルを舞台としたSFアクション作品である。2025年10月に公開されたこの作品と、同時公開された『地獄からやってきた私の救世主』の2本が、Vigloo初のフルAI制作作品となる。

 第1話の冒頭に、「この作品は生成AIで制作されました」というクレジットが表示される。物語の前段は気象災害の状況説明が必要なので、実写であれば都市の撮影(空撮)やそれにプラスしてかなり大掛かりなCG合成が必要となる。

作品冒頭にAIで制作した旨のクレジットが入れられている

 しかし舞台が未来であれば、実存するビルや街を再現する必要はないことから、非常にAI向きの設定であることがわかる。

 人物の描写はかなり丁寧で、若干顔が油っぽい感じなのを除けば、違和感は少ない。おそらく疲労感を演出するために、肌のトーンを油っぽくしているものと想像する。

 ただ気になるのは、編集とカットの構成が合っていないことだ。例えば1分10秒のあたりに、大佐と主人公が向かい合って口論するシーンがある。お互いの肩越しのショットではあるが、イマジナリーラインの崩壊が見られる。

 イマジナリーラインとは、ドラマのカット割、あるいは漫画のコマ割りなどで基本となるアングル設定のルールだ。例えば向かい合っている2人の人物を1人ずつカット割するならば、左に立つ人物の横顔は右側であり、右に立つ人物の横顔は左側であるべきだ。

 しかしこのシーンでは向かい合っているはずの人物が、どちらも顔の左側を見せている。つまりカメラが逆側に瞬間移動してしまっている。これでは向かい合っているという表現にならない。

イマジナリーラインの原則

 続いて2026年3月に公開された『血の絆、ルナの運命』を視聴した。ヴァンパイアを題材としたファンタジー現代劇とも言える作品だ。

 こちらはイマジナリーラインの崩壊もなく、制作および演出の技術が向上しているのが見て取れる。バストショット以上のアップショットの切り返しを多用することで、背景を省略し、整合性の矛盾を回避している。縦構図なので、バストショットぐらいの画角にすれば背景はほとんど入らない。

 シーン変わりではロングショットも挿入されるが、全体的に画角が窮屈なため、ストーリー運びが性急な印象がある。ただ1分程度に細かく分けて視聴するという利用形態を考えれば、こうしたテンポの速さが求められるのかもしれない。

 ショートドラマの市場拡大に合わせて、スピード感のある映像制作が求められてくるのは明らかだ。全編AIによる映像制作はまだ始まったばかりであり、Viglooの作品中にもさまざまなトライアルがなされていることが見て取れる。

 こうした先行作品は、今後フルAI制作を考えている制作会社にとっては、非常に参考になるだろう。ぜひVoglooで、フルAI作品を視聴してみて欲しい。

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クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。

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