「見えないWeb攻撃」──情報漏えい対策の盲点
WAFを89%すり抜ける事例も──AIが休みなく仕掛けるWeb攻撃、予防策はあるか(2/4 ページ)
どう守る「AIによるWeb攻撃」
AI生成する攻撃に対抗するには、防御側にもAIを取り入れて攻撃の試行を阻止する仕組みが必要になる。下図は、WAFの内部に3段階の攻撃検知の壁を設けて、すり抜けを阻止している具体例だ。
1つ目の壁は、既知の脆弱性情報や攻撃手法に基づき専門家が作る通常のWAFルールによる検知。その次は、深刻度の高いゼロデイ脆弱性の公表に即応してWAFで “仮想パッチ” を施す緊急対応用の壁だ。これまではこうした“第2の壁”でなんとか対策できていた。
しかし、先述したようにAIはこうしたルールのすり抜けをなんとか狙おうとする。そこで、今度はWAFにも専用のAIを搭載し、攻撃の特徴を捉えて検知ルールを自動生成することで、すり抜けを阻止する仕組みを設ける。これが3番目の壁となり、AI攻撃に対する最終防衛ライン=セーフティーネットとして働くわけだ。
AI攻撃の「サイバーキルチェーン」を断ち切れ
フロンティアAIによるWeb攻撃を巡っては、注目すべき事例がもう一つある。トレンドマイクロが報告した、AIエージェントを用いてメキシコ政府とブラジルの金融機関へWeb攻撃を行った侵害キャンペーンの事例だ。
このケースでは、公開WebサーバにWebシェルを設置し、AIが生成した命令文を流し込むことで、バックドアの設置やデータ窃取が行われた。レポートによれば一連の工程はエージェント型のAIが自律的に組み立てたという。この例のようにエージェント形AIは、目的の達成のためにさまざまな手段やツールを組み合わせて攻撃を試みる。
一方で、レポートでは「堅牢なセキュリティ基盤を構築していた環境では侵入に失敗した」と報告されている。つまり、これまで構築された多層的なセキュリティ対策が十分に堅牢なら、AI駆動型の攻撃に対しても防御機構として機能することが示されている。
AI に同様の攻撃を受けても実被害を出さないためには、下図で示した攻撃の進行を示すサイバーキルチェーンの各段階で攻撃を可視化して、それ以上の攻撃の進行を断ち切る備えが重要だ。これには、進化形のWAF(WAAP: Web Application and API Protection)が備える多層防御の仕組みが有効だと考えられる。
Web攻撃のサイバーキルチェーンと多層防御戦略の効果
各社のフロンティアAIの先行利用プロジェクトの成果と考えられるブラウザやOSやアプリケーションの潜在的な脆弱性が次々と発見されている。例えばLinuxでは「Copy Fail」などのroot権限昇格が複数発見された。この脆弱性の悪用で実被害を出さないためには、サーバに命令を投入されないよう、RCE(リモートコマンド実行)や、Webシェルなどのバックドアツールを検知するWAFルールが有効だと考えられる。
静的なWAFルール照合に頼らない複合的な検知の仕組みとしては、AIが駆動するbotアクセスを検知するbot対策システムや、過去の攻撃履歴などのインテリジェンス情報から攻撃元になりうるIPアドレスごとにリスク度をリアルタイムに判定しアクセスを制御する「IPレピュテーション」などの組み合わせが有効だ。
WAAPが備える多層防御能力を活用することで、実被害を阻止するだけでなく、攻撃側のAIを惑わせて、どんなパターンが有効な攻撃となるかの類推を妨害する効果も期待できる。加えてログ情報から攻撃の痕跡を分析すれば、AIが執拗に攻撃しようとする潜在的なシステムの弱点を防御側であぶり出すこともできるだろう。
AI攻撃の特徴は、複数の脆弱性を組み合わせて目的を達成する能力に長けていることだ。逆に言えば、その攻撃成功の道筋のどこかで多層防御によって攻撃の試みをつぶせれば実被害を避けられる。
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「見えないWeb攻撃」──情報漏えい対策の盲点
さまざまなWebサービスが、巧妙に隠された「見えないWeb攻撃」に狙われている。個人情報漏えいや犯罪行為を引き起こしている攻撃の実態を、独自のデータを交えて分析する。
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