「見えないWeb攻撃」──情報漏えい対策の盲点
WAFを89%すり抜ける事例も──AIが休みなく仕掛けるWeb攻撃、予防策はあるか(3/4 ページ)
狙われるAPI 原因と求められる対策は
AI攻撃に狙われやすいもう一つの標的が、スマホアプリや企業間連携で用いられているAPI (Web API)だ。APIは、共通ID化や企業間連携、提供したいサービスなどの企業ごとのビジネス要件や既存システムの構成に基づいて、各社で独自に設計・開発される。
APIを駆動するプログラムには、認証・認可や仕様設計の甘さから生じたセキュリティ上の不備が潜在しやすい。また、人気のサービスほど機能拡張に伴い頻繁にAPIが更新される傾向があり、常時新たな不備や見落とし、脆弱性が生まれている可能性がある。
APIへの攻撃では、例えば「パタメーターファジング」というリクエストの中身を変化させて、APIの応答から機微な情報の摂取や、不正な操作が成功しないかを試していく手法がよく用いられる。この種の攻撃の自動化にAIが利用されることは想像に難くない。
進化したAIは、広く普及しているオープンソースプログラムの脆弱性だけでなく、APIなどの個社ごとに開発されているプログラムの仕様やコードの弱点を洗い出せる。特にAPIへの攻撃では、複数のAPIの欠陥を組み合わせて攻撃を成功させる手法が一般的だが、攻撃を自律的に組み立てるエージェント型AIは、このような複雑な組み合わせ攻撃を網羅的に試行する。これにより、潜在的なAPIの弱点が次々に攻撃に悪用される可能性が飛躍的に高まっている。
そのため防御側では 「自社の開発したコードや仕様に潜んでいるAPIの欠陥を、AIから攻撃試行を受けるより早く発見して修正する仕組み」の構築が急務となっている。「AIを用いたコードの綿密なセキュリティ検証」に加え、「複数の欠陥を組み合わせようとするAIの動きを実際のアクセスデータからリアルタイムに捉えて遮断し、さらに構造上の欠陥を分析して修正を促す」といった、攻撃や偵察活動の機先を制する予防的な対策を本格的に導入すべき時期が来たと言えるだろう。
ゼロデイは「対処」から「予防的対策の強化」へ
フロンティアAIによって潜在的な脆弱性が大量に発見されていることから、サイバーセキュリティ基準の策定を担うNIST (米国国立標準技術研究所) では、CVE(IT製品やソフトウェアの脆弱性に与える世界共通の公開識別ID)に詳細情報(重要度スコア・影響製品リスト)を付与する「エンリッチメント」の運用を変更。全てのCVEを対象にするのをやめ、重要なものに絞る方式に変えた。
一方、フロンティアAIを先行利用するベンダー各社では、従来のAIとは一線を画する検知の質や精度を高く評価する一方で、発見される脆弱性やバグなどの“総量” を問題視もしている。洗い出される問題点には攻撃に悪用される可能性が低く、直ちに深刻な問題につながらない “ノイズ”が、深刻な問題の10~20倍混じっているという。
そのノイズの中から、対処すべき優先度の高いものを選び出し(トリアージ)、検証し、副作用の起きない修正パッチを作る作業には人間の介在が必須で、相当の時間を要する。そのため、脆弱性が見つかっても速やかな修正パッチのリリースが必ずしも期待できない状況が続いている。
これらの変化からも、ゼロデイ脆弱性に対して従来の「公開された修正パッチを速やかに当てる」という対症療法的な措置を取るだけでは、AI攻撃の脅威に対抗できなくなっていることは明らかだろう。当然ながら、APIのような個社ごとに異なる未知の脆弱性には、修正パッチそのものが(自社で作成しない限り)存在しない。
従って、今後のセキュリティ対策には、ゼロデイ対策から、時間をさかのぼって攻撃による実被害を抑え込む“予防的対策”の強化を図る根本的な方針転換が必要になるだろう。
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「見えないWeb攻撃」──情報漏えい対策の盲点
さまざまなWebサービスが、巧妙に隠された「見えないWeb攻撃」に狙われている。個人情報漏えいや犯罪行為を引き起こしている攻撃の実態を、独自のデータを交えて分析する。
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