日本は「月面輸送」を産業にできるか? 三菱重工と組んだispace、国産ロケットを選んだ3つの理由(2/3 ページ)

 そもそも月面探査とはこれまで、各国の政府機関が科学的成果を目指して宇宙企業に開発を発注、ミッションごとに買い切る形が一般的だった。しかし今般、NASAを中心に、政府が科学探査、安全保障、通信、電力、輸送の需要を作り、民間から継続的にサービスを調達するエコシステム構築が進んでいる。

 背景にあるのは、中国の宇宙探査・月面有人滞在の計画と、米中の緊張関係だ。NASAは3月、「ムーンベース」と呼ばれる月面基地構想を発表し、アルテミス計画の中の月面着陸ミッションを「Ignition」の名の下で再編し始めた。この中に、民間活用の無人探査機による月着陸ミッション群「CLPS」(商業月面ペイロードサービス)が含まれる。

 これに伴い、NASAは民間企業による現行の調達枠組みを再編している。現行の調達枠はCLPS 1.0と呼ぶ一方、先述したようなエコシステムの利用を「CLPS 2.0」と定め、後者からの調達を開始した。当面はそれぞれの枠組みを活用し、20年代末に向けて着陸機会(とそれに伴う調達)を大幅に増やす方針を示しているが、移行が進めばどうなるか分からない。

 そしてispaceは旧CLPSミッション群の中ではチャールズ・スターク・ドレイパー研究所が主導する「チーム・ドレイパー」の一員として「CP-12」というミッションに参加する予定だった。だがこの契約は7月15日に終了が発表され、事実上キャンセルとなった。

 というのもNASAによる調達の再編は、これまで4回の打上げにとどまっていた月面ミッションの加速(と、実現サイクルの向上に向けたプレッシャー)という側面もあった。そのため旧計画の見直しも含まれるわけだ。

 ispaceはCLPS2.0への参入も指向しており、単一のミッション計画終了が月面探査市場からの締め出しを意味するわけではない。ただしNASAの要求に応えるには、能力に加えてスピードも求められる。CLPS 2.0によってNASAによる月面探査需要が拡大しても、個々のタスクオーダー(発注)を獲得できるかは別問題だ。

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