不動産とITのナゾ
なぜ「事故物件」をあえて買うのか “2〜5割安”の魅力と、AIによる透明性への道(2/2 ページ)
国土交通省が2021年に発表した「宅建業者による人の死の告知に関するガイドライン」によると、人の死が物件の購入や貸借に影響を及ぼす場合、不動産会社にはそれを告知する義務が生じる。このため、他殺や自殺、事故死などがあった物件では、共用部分だったとしても原則として情報を開示しなければならない。
近隣に「指定暴力団の事務所がある」「過去に殺人事件があった場所がある」といった場合も、不動産会社は自主的に情報を開示していることが少なくない。こうした場合、工務店が施工したがらなかったり、金融機関が融資を渋ったりすることがあるためだ。
安い価格や補助金、時代の変化も
それにしても、忌み嫌われやすい「ワケあり物件」を購入したがる人がいるのはなぜなのか。購入者が最も魅力を感じるのが価格の安さだ。細川氏は「ワケあり物件は需要が少ないため、一般の物件に比べて2~5割ほど購入価格が安いことが多い」と話す。
空き家などの家屋を解体する際に、解体費用の一部を補助する制度をもつ自治体もある。例えば、東京都では家屋の解体工事に関して「空き家の解体」「老朽危険家屋の除却」の補助金制度がある。こうした制度の要件を満たせば、事故物件の解体費用も軽減される。
時代も変化した。「縁起」や「心霊現象」といった必ずしも科学的根拠で説明できないことを信じる人は従来に比べて大幅に減少。共働きが増えて日中に自宅にいない家庭が多くなり、昼間の騒音が気にならない人も珍しくなくなった。このため、駅が近かったり、人気エリアにあったりするにもかかわらず、相場に比べて大幅に安いワケあり物件に高い関心を持つ人は少なくない。
自分が居住しない投資用不動産であれば、コストを抑制できる分、投資の利回りが一般の物件に比べて高くなるメリットもある。このため、個人投資家だけでなく、除菌・消臭など特殊清掃から売却まで一貫して実施する「ワケあり物件の専門買い取り業者」が相次いで登場しているほどだ。
AIの活用で不動産情報のさらなる透明化を
ワケあり物件が空き家や廃墟にならず、有効に活用されるのは、経済面からいえば決して悪いことではない。だが、知らないうちに「ワケあり物件を購入していた」「賃貸契約してしまった」という人たちが出てくるのは問題だ。実際、こうしたワケあり物件の一部には、告知や情報開示のガイドラインがあるものの、曖昧な部分も多い。例えば、賃貸契約では事件から3年後に告知義務がなくなるのが一般的だ。事件が起きてから数年が経過し、入居者が数名入れ替わった場合も告知されないケースがある。孤独死についても発見が遅れて特殊清掃などが必要になるような事態にならなければ、告知義務が発生しないとされる。事故情報を開示している民間サイトも複数あるが、「すべての情報が正確とは限らない」との指摘もある。
情報が十分に開示されず、「実はワケあり」という物件が流通してしまえば、不動産について消費者の不安が募り、不動産業界にもマイナスだ。こうした消費者と業者の「情報の非対称性」の解消に向けて欠かせないのが、AIをはじめとしたITの活用だ。AIは不動産情報サイトやメディアの報道、SNSなどを収集・分析して、物件の事故の履歴を判定することが可能。不動産業界の自主的・積極的な情報開示に加えて、最新の技術を通じて物件情報をさらに透明化できれば、多くの消費者が安心して住まいを選んだり、不動産投資をしたりできる社会の構築に一歩近づくだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
不動産とITのナゾ
多くの人にとって「住まい」に当たる不動産は身近なはずなのに、なぜかよく分からないことだらけ。他の業界では常識なのに、不動産業界では非常識。そんな不動産の「ミステリー」を専門家がわかりやすく読み解き、AIをはじめITを活用した不動産の近未来を探る。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
Hugging Face侵害事件、OpenAIとMETRが最終報告書公開──約1200体のAIエージェントが“闇掲示板”で結託し700体が攻撃に参加
-
2
ソニー・ミュージックパブリッシングとワーナー・チャペル、Anthropicを著作権侵害で提訴
-
3
「FANZAスタジオ」爆誕へ 成人向けAIマンガに違和感を覚えるマンガ家も期待する部分とは?
-
4
ダサいスライド資料を作る大会が開催中 応募フォームもダサい
-
5
OpenAI、Cursorへのモデル提供を11月12日に終了 SpaceXによる買収が理由
-
6
Anthropic、AIで物理機器を制御する共通規格「MHS」発表 将来オープンソース化へ
-
7
AIが生成した“存在しない病名”、研修医の44%が信用 見抜けた医師との差は? 仏大学病院が検証
-
8
イエローハット、最大180万人分の情報漏えいか 作業予約システムに不正アクセス
-
9
トレファク子会社に不正アクセス、13万人超の顧客情報漏えい 二段階認証設定しておらず
-
10
大人向け「スーパーカー自転車」は和テイストだった リトラクタブルライトにRFID認証など装備満載
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR