不動産とITのナゾ

なぜ「事故物件」をあえて買うのか “2〜5割安”の魅力と、AIによる透明性への道(1/2 ページ)

 「なぜインターネットで本は買えるのに不動産は買えないの?」「マンションを借りる時に不動産屋のお兄さんが急いでFAXを送るのはなぜ?」。多くの人にとって「住まい」に当たる不動産は身近なはずなのに、なぜかよく分からないことだらけ。他の業界では常識なのに、不動産業界では非常識。そんな不動産の「ミステリー」を専門家がわかりやすく読み解き、AIをはじめITを活用した不動産の近未来を探る。

 バブル経済の崩壊後、低迷してきた日本の不動産価格が反転上昇し、内外からの投資が盛り上がる中、海外の先進事例なども交えて将来の不動産業界や価格を分かりやすく展望する。第5回は「なぜ『ワケあり物件』が売れるのか」を深掘りする。

著者プロフィール:加藤勤之

GA technologies

Public Relations 本部長 宅地建物取引士

2002年、東京工業大学理学部数学科卒、博報堂入社、外食、製菓、化粧品メーカーの営業に約10年従事、その後、労働組合委員長を経て、経営企画や新規事業開発、働き方改革部長などを務める。 2018年12月、総合不動産会社オープンハウス入社、マーケティング本部長、広報宣伝部長、社長室長、事業開発部長に従事、兼務で、スキー場を運営する子会社みなかみ宝台樹リゾート代表も務めた。

2023年11月、GA technologiesに入社、Communication Design Center本部長を経て、現在は、Public Relations本部長として、広報と渉外の責任者を務める。

「そのワケあり物件、気に入りました」

「その物件、とても気に入ったので、ぜひ話を進めてください」

「……本当にいいんですか?」。

 大手不動産会社に勤めていた細川直寛氏は5年前、店頭を訪れた夫婦の言葉に戸惑いを隠せなかった。その夫婦が「購入したい」と言ってくれた都内の一戸建てが、数年前に放火された「ワケあり物件」だったからだ。火事になった物件は、化学物質などが燃えて有毒ガスが発生する場合が多いため、特殊な解体処理が必要になる。もちろん、こうした物件は買い手がつきにくい。放火となればなおさらで、「縁起が悪い」と敬遠されやすくなる。しかも当時、放火犯はまだ捕まっていなかった。

 「購入してくれるのはありがたいけど、後になってクレームをつけられないだろうか」。不安を抱えつつ、物件の内容を丁寧に説明しながら手続きを進めたが、結局、夫婦はこの「放火物件」を購入し、旧家屋を解体した上で自分たちの新居を建設した。

ワケあり物件には告知義務

 「ワケあり物件」とは土地・建物に何らかの問題を抱えている物件のことだ。放火や殺人事件があった「事故物件」はもちろん、土壌汚染やアスベストの使用など物理的に欠陥のあるものも含まれる。工事現場などの騒音、振動、ごみなどの悪臭といった環境面の問題、法令によって容積率などの自由な利用が制限されているような物件も対象だ。夫婦が購入したのは、「ワケあり」のど真ん中ともいえる事故物件の一つだった。

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