AI創薬候補、6種の「老化時計」で生物学的年齢の低下を示唆

 生成AI創薬のInsilico Medicineは9月7日(米東部時間)、治療薬候補「レントセルチブ」(rentosertib)の投与を受けた患者のデータを解析したところ、6種類の「老化時計」(aging clock)すべてで「生物学的年齢」の低下が示されたとする研究結果を科学誌Nature Biotechnologyで発表した。既に実施した臨床試験で採取した血清のプロテオームデータを解析したもので、異なる手法で構築された6種類の老化時計すべてで低下傾向がみられたという。

 Insilico Medicineは生成AIによる標的探索と分子設計を軸に医薬品開発を手掛けるバイオテクノロジー企業。2025年12月に香港証券取引所に上場しており、線維症やがん、免疫、代謝疾患など40件以上の開発プログラムを抱える。今回の論文の筆頭著者は同社創業者で共同CEOのアレックス・ジャボロンコフ博士。

 老化時計とは、血液などから得た生体データを機械学習モデルに入力し、実年齢とは別に体の老化の進み具合を生物学的年齢として推定する技術だ。今回使ったのは、DNAのメチル化を基にする従来型ではなく、血中タンパク質の量から推定する「プロテオミクス時計」6種で、学習手法も学習の目標も異なる。異なる手法による推定結果が一致したことは、単一モデルの偏りではないことを示すと論文は説明している。

 レントセルチブは、同社がAIによる標的探索で「TNIK」という分子を老化と線維化の双方に関わる標的として特定し、生成AIで分子構造を設計した薬剤候補。肺の組織が硬く厚くなって酸素を取り込みにくくなる進行性の難病「特発性肺線維症」(IPF)を対象に、中国で第2a相試験を実施済みで、現在は第3相段階にある。

 再解析の対象は、この第2a相試験に参加し同意した42人の血清。ベースラインと2週、4週、12週の時点で2841種のタンパク質を測定した結果、投与群は6種すべての時計で生物学的年齢が低下した。効果が最も大きかったのは30mgを1日2回投与する群の4週時点で、約3~4歳分、時計によっては最大6歳分の低下がみられたという。

6種の老化時計別に見た、投与群の生物学的年齢の変化(プラセボ群との差、単位は年)(出典:同社の論文、CC BY 4.0)

 肺機能の改善が最も大きかったのは60mgを1日1回投与する群で、老化時計の反応が最も強かった群とは一致しなかった。肺機能の変化が生物学的年齢の変化を説明する割合も小さく、論文は、老化時計の変化が肺機能改善の単なる副次的な結果ではない可能性を示す材料としている。一方で著者らは、参加者数が少ないこと、対象がIPF患者に限られること、12週と期間が短いことなどから、抗線維化作用と老化への作用を明確に切り分けることはできないとしている。老化そのものへの作用を確認するには、IPF以外の患者や健常者での検証が必要だとしている。

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