仏文学賞、AI執筆疑いで候補作を除外 ベストセラー小説巡り「盗作か否か」論議

 フランスの文学賞「ゴンクール賞」の選考委員会は9月25日(現地時間)、人工知能(AI)で執筆した疑いがあるとして、ハイチ出身作家の候補作を選考から除外すると発表した。作品は全仏でベストセラーとなっている小説で、「盗作か否か」をめぐる論議が続いていた。

 この作品は、小説家テリソン・オレリアン氏(38)の「それか、死かの選択だった」。ハイチ人移民の主人公がさまざまな国を経てカナダに行き着く過程を描き、カナダで今春出版された。オレリアン氏自身もカナダへ移民した経歴を持つことから話題を呼び、フランスで8月に出版された後、3万部以上を売り上げた。

 しかし、SNS上で「ほとんど全部がAIで作成されている」との告発が浮上。AI盗作検索ツールで判明したとの主張だった。仏通信社が別の検索ツールで調べたところAI生成か否かの判定は分かれ、オレリアン氏は盗作を全面否定してきた。

 選考委員会は同日の声明で、「信頼に足る研究者やジャーナリストの分析を踏まえた結果」と決定の理由を説明。「AI生成の文章による創作作品は決して支持せず、容認しないというメッセージだ」と訴えた。作品は9月に入り各種文学賞の候補となり、すでに受賞が決まったものもある。

 一連の騒動を巡っては、オレリアン氏が黒人であることから「反移民右派の攻撃ではないか」との批判も噴出。告発したSNSアカウントの運営者は名乗り出た上で、AIについて「技術が著しく進化し、作品が権威ある文学賞をもらえる水準に達している」と警鐘を鳴らす目的があったと主張するなど、波紋が広がっている。

 ゴンクール賞は100年以上の歴史を持ち、毎年11月に受賞作が決まる。過去の受賞作にはアンドレ・マルローの「人間の条件」、マルグリット・デュラスの「愛人(ラマン)」、ピエール・ルメートルの「天国でまた会おう」などがある。【パリ=三井美奈】

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