PHP脆弱性でいち早くサービス停止、コドモン経営判断の舞台裏 実はオンラインイベントの真っ最中だった(2/4 ページ)

「1%でも漏えいの可能性があれば止める」

 こうした動きの中、サービス停止を決断した小池代表の心境、そして意思決定の根拠は。以下、同氏へのインタビュー形式でお届けする。

──サービスを止めると判断した瞬間の心境を教えてください。難しい判断だったのではないでしょうか

小池氏(以下敬称略):判断のポイントは2回ありました。1回目は午前11時半ごろです。エンジニアから、PHPの脆弱性が発表されたことと、修正版が公開される午後11時ごろにサービスを止めるべきだという報告を受けました。これは妥当な判断だと考え、すぐに決定しました。

 2回目は、その1時間ほど後の午後0時半ごろです。「今すぐサービスを止めるべきではないか」と、より切迫した様子で相談がありました。

 そのときにまず考えたのは「本当に止める必要があるのか?」でした。止めた場合の影響は想像がつきました。昼以降は、施設で連絡帳の記入や、アプリでの午睡チェック(昼寝中の呼吸確認)、園内の帳票作成などが行われる時間帯です。その後は保護者のお迎えの時間で、サービスが使われ続けます。そこで止まれば、施設も保護者も大きく混乱するはずです。

 そのため当初は、止めずに済む手段はないか、全てを止めなくても、リスクの大きい部分だけを限定的に止める方法はないか、と考えながらエンジニアと議論を続けていました。

──それでも最終的に全サービスを止めると判断したのは

小池:今回は、悪意のあるプログラムが入り込めば、最悪の場合全ての情報が漏えいしかねない種類の脆弱性でした。どこまで入り込まれ、当社のセキュリティが突破されるのかは読み切れません。しかも時間がたつにつれてエンジニアの間で議論が進んでおり、脆弱性の具体的な箇所がわずか数時間で特定されつつありました。

 午後11時に修正版が公開されるまでに何が起こるか分からない中で、当社が預かっている保護者や子どもたちの機微な情報が漏えいする可能性は高いと考えました。万一漏えいすれば、説明責任を果たせなくなります。この情報を必ず守ることが、判断軸の最上位でした。1%でも、それ未満でも漏えいの可能性があるのであれば、(サービス全体を)止めるしかないと判断しました。

──停止による損失はどう見積もっていましたか

小池:直接的な損失としては、SLA(サービス品質保証)に基づく補償が発生しますので、最低限の補償はしなければならないと考えています。他にも、施設から損害賠償を請求される可能性がありますし、保護者や施設、世論からのレピュテーションリスクも大きいとみていました。結果的にはご理解いただけた方が多かったのですが、決定した時点では、世間から強い反発を受けることも覚悟したうえでの判断でした。

 特に今回は、停止を優先したため事前の告知ができませんでした。当社が事前告知なしにメンテナンスを実施したのは初めてです。自治体のお客さまも多いため、自治体からも厳しいお叱りを受けるだろうと考えていました。

──実際の反応は

小池:停止直後は、さまざまな声をいただきました。「すでに情報が漏えいしたのか」というお問い合わせも多く、なぜ告知せずに止めたのか、停止中はどう業務を進めればよいのか、といった声もありました。保育園の運営は当社のサービスを前提に設計されていることも多く、代替手段をどうするのか、といった問い合わせが、停止から1時間ほどは続きました。

 しかしその後、PHPの脆弱性に関する報道が増えるにつれ、リスクを防ぐためのメンテナンスだったと少しずつ理解いただけるようになりました。当時の状況における判断としては、間違っていなかったと考えています。なお、現時点(編集注:取材は10月28日)で本件を理由とした解約は発生していません。

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