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スカウター? オリンパスの強調現実インタフェース

» 2004年12月01日 17時56分 公開
[ITmedia]

 ミニチュアのおとぎの部屋にCGの音符が踊ってる──12月1日に始まった「オリンパステクノロジーフェア 85」(東京国際フォーラム)で、同社が取り組むユニークなインタフェース技術が出展されている。現実世界の上にCGを重ねて表示する「強調現実」と呼ばれる技術だ。エンターテイメント分野や製造業などの産業分野への応用も期待できる。

こうやってビューワを構えて見る

 同社のR&D部門が出展したのは「シースルー情報ビューワ」。業務用ハンディターミナルほどの大きさの専用ビューワの透明部分を通して現実を眺める。デモ用に置かれたミニチュアの部屋を見てみると、CGで描かれた音符が部屋の階段を上っていき、今度はラッパの口から飛び出てくる、といった不思議な世界を体験できる。

ミニチュアの部屋(上)をビューワを通して見ると、現実の上で3DCGの音符が踊っている(下)。ただしこれは撮影の都合上、同様の仕組みをPCで表示させた例。上の部屋のあちこちに散らばる不思議な図形の絵が位置検出用のマーカーの役目を果たしている

 強調現実(Augmented Reality)技術では、コンピュータによる仮想現実と実際の現実を重ね合わせて表示することで、現実の理解を補強する。仮想現実(Virtual Reality)が世界そのものをCGなどで仮想化し、そこに人間が入り込むというコンセプトなのに対し、強調現実はあくまで現実世界の情報を生かし、仮想世界は現実の“強調”に使われる。

 シースルー情報ビューワの仕組み自体は一見シンプルだ。CGは液晶ディスプレイで映す。透明表示部は、ペリクルミラーのように目の前のものは透過させつつ斜め方向のCGも反射して同時に表示できるため、見たままの現実にCGが重なって見えるわけだ。

 問題となるのは、見る人の視点。どこで見るかでCGを重ねる位置が異なるため、位置を検出する技術が必要になる。この技術では、現実世界に位置検出用のマーカーを複数設定しておき、ビューワのカメラで捉えたマーカーの見え方から視点位置や姿勢を判断する。

 もちろんリアルタイムにCGを表示するには、視点位置の検出やCGの表示位置の決定などもリアルタイムに行う必要がある。処理の高速化や現実との一致のさせ方などには相当な技術とノウハウが必要だ。

 デモで見せたのは「デジタル絵本」の応用例だが、例えば倉庫で保管物の情報をコンテナに重ね合わせて表示したり、見本市会場で各社のブースの案内に活用したりと、考えられる用途は幅広い。

デモ出展したデジタル絵本(上)は応用例の一部

 ちなみにこのシースルー情報ビューワ、人気漫画に登場するあのガジェットによく似ている。「企画書には『戦闘力3500』とか書いてありますよ」(担当者)。同社のコーポレートスローガン「Your Vision, Our Future」の通り、未来を形にした夢のある技術だ。

 同フェアは5年に1度、同社グループの技術力を公開する場として開催され、4回目。錠剤のように飲み込めるカプセル内視鏡(関連記事参照)やDNAコンピュータ、MEMS技術によるマイクロロボットなどが公開されている。12月3日まで。一般は非公開。

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