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“おもちゃルネッサンス”、カギはコンテンツ展開──タカラトミー

» 2005年08月24日 21時05分 公開
[ITmedia]

 2006年3月に合併予定のタカラとトミーが8月24日、新会社の基本方針を説明した。インデックスと合弁で設立する戦略会社を活用し、玩具とデジタルの融合によりコンテンツ展開を進める新ビジネスモデルを推進。リストラで効率も高め、2009年3月期に連結売上高2000億円、営業利益率8%を目指す。

3社が持つ強み──インデックスの落合会長、トミーの富山社長、タカラの佐藤会長(左から)

 「日本の玩具業界はもうからない構造になっており、厳しいのは事実。だが世界的には市場は大きく、タカラトミーが日本の業界を再生していきたい」(タカラの佐藤慶太会長)。

 合併新会社「タカラトミー」が掲げるのは「おもちゃルネッサンス」。新会社は、TVゲームなどを除く「コア玩具」国内市場でシェア20%とトップに立つ。少子化や合理化の遅れなど、厳しい環境にさらされている玩具業界を、改革と新ビジネスモデルを展開することで再生する──が新会社の当面のゴールだ。

タカラ×トミー×インデックス=「T2i」

 新会社の成否を握るのが、9月に設立予定の戦略事業会社「ティーツーアイ エンターテイメント」(T2i)。当初の資本金は10億円。最終的にはインデックスとタカラトミーの折半出資とし、インデックスの連結子会社とする。

 T2iは、タカラトミーが蓄積してきたコンテンツ資産を、インデックスが持つ携帯電話・PC向け配信プラットフォーム・ノウハウを活用することで「デジタルメディア」事業を展開する。単品のヒット商品を開発・販売するだけだった従来のビジネスモデルを超え、玩具のヒットを出発点とし、アニメ・ゲーム化や他社へのライセンス供与、ネット配信、シリーズ化──と長期間にわたって収穫が見込める「おもちゃ発のコンテンツづくり、が新ビジネスモデルの目標」(トミーの富山幹太郎社長)だ。

 T2iの具体的な事業領域は(1)コンテンツ企画・調達、(2)デジタルコンテンツ、(3)コマース、(4)ライセンス、(5)広告・メディア──の5分野。

 (1)ではタカラトミー傘下のアニメ製作会社・竜の子プロダクションの過去作品のリメイクを検討している。(2)ではインデックスの携帯向けサービスとキャラクターを組み合わせるなどして会員数の拡大を図り、(3)ではタカラトミーの商品を中心にトップクラスの玩具ショッピングサイト構築を目指す。広告事業では、雑誌広告などのプル型一辺倒だった玩具広告でプッシュ型も試みていく。

 タカラ、トミー、インデックスのテレビCMを統括するハウスエージェンシー機能なども持たせる。各社の事業移管などから、初年度の2006年8月期で売上高100億円、経常益10億円を見込む。2008年8月期には売上高150億円、経常益15億円に拡大させ、早期の株式公開も目指す。

非コア事業は売却へ

 タカラトミー本体の改革も進める。事業ドメインを玩具と玩具周辺、デジタル分野に絞り込み、集中事業はM&Aを含めて強化する方針だが、一方で非コア事業は売却などで整理を断行する。

 「具体的な売却予定事業などはまだ言えない」(佐藤会長)が、2009年3月期までに、合併後会社の社員数の15%に当たる640人を削減する計画だ。組織のスリム化とともにプロダクト管理にも取り組む。商品アイテム数を3割減の5400品とし、SCMの徹底などで在庫回転率も向上させる。

 事業再構築による効率化で、同期までに190億円のコストシナジー創出を見込む。2005年3月期(単純合算)の売上高1804億円・営業赤字71億円・株主資本利益率(ROE)−35%を、2009年3月期に売上高2000億円・営業益160億円・ROE 20%に拡大させるのが目標だ。

「ITを使って消費者とダイレクトに接していく」

 タカラの佐藤会長は「タカラとトミーでは商品がかぶって大きく伸びないのでは、とよく聞かれる。だが改めて分析すると、トミーは幼児や女性に、タカラは小学校中学年から高学年に強い。合併でターゲットは広がり、フルラインアップがそろう」とした。

 一方で「日本のおもちゃ売り場は面白くなくなっている。消費者とマッチしなくなったのか、危機感を持っている。ITを使って消費者と直接接していくような仕組みを研究していきたい」とも話し、インデックスの協力を得て玩具業界へのIT導入を促していく考えを示した。

 トミーの富山社長は「ライバルとなるバンダイはキャラクター中心。われわれはおもちゃの面白さの上にキャラクターをかぶせていく。バンダイの高須武男社長と最近会い、『絶対に負けない』とお互い話した」という。営業利益率目標の8%は「これくらいは達成しなければという数値。米国メーカーは10%とレベルが違うが、最終的にはこうした企業と渡り合いたい」と語った。

ライバル・バンダイとのメディア枠の比較

 インデックスの落合正美会長は「両社が経営統合ではなく合併を選んだので個人的には心配していたが、トップがひざをつき合わせてゼロから考え、今回の方向性が出た」と評価。「T2iは両社が手つかずだった分野。現在上場している携帯コンテンツ企業は大手企業のグループ会社が多いが、タカラトミーはこの分野で規模が小さい。一挙に100億円以上に持っていき、大きなプロバイダになるベースを作る」とし、積極的に協力していく姿勢だ。

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