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求む、検索という“素材”の料理人――ヤフーのAPI公開

» 2005年12月06日 16時04分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「ネット検索はこれからどう進化していくかは分からない。APIを公開すれば、さまざまな応用の中から次の動きが見えてくる」――ヤフーが検索サービスのAPIを公開した背景を担当者はこう語り、外部の技術者とのコミュニケーションから、技術の進化を探っていく構えだ。

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 同社はサービスの技術仕様(API)を開発者向けに無料公開するサイト「Yahoo!デベロッパーネットワーク」(YDN)をこのほど開設し、第1弾として「Yahoo!検索」のAPIを公開した。「完成度の高い検索サービスを作ったので、ヤフー社内だけでなく、ネット上の人々にも“料理”して欲しかった」と同社検索企画室の宮崎光世さんは背景を語る。

 YDNを開発者コミュニティーに根付かせたい――こう考えた検索企画室の堀江大輔さんは、外部の技術者にAPIを活用したサイトを構築してもらって“実例”を見せながら、口コミでYDNを広げていこうとした。堀江さんのこの考えに応え、Yahoo!検索を最初に導入したのがはてなだ。

 はてなはかねてから、サイト内にWeb検索を導入したいと考えていた。同社の伊藤直也最高技術責任者(CTO)は「Web検索は自社開発するとぼう大なコストがかかるが、APIならほとんどコストなしで取り入れられる」とベンチャーにとってのメリットを語る。

 「検索はすでに確立した世界。今から入り込むのは現実的ではない。APIで公開してくれれば、それをベースにすることで、ベンチャーや個人の開発者でも、自分のサイトに合った検索サービスを実装できる」(伊藤CTO)

 堀江さんによると、ヤフー検索のAPIは技術を勉強したての人でも、比較的容易に利用してもらえるという。はてなの吉川英興さんも「1日で導入できた」と手軽さを評価する。

photo ヤフー検索を組み込んだWeb検索を搭載したはてな検索。検索結果のページに、「はてなブックマーク」登録数を表示する

「Web 2.0」の定義の進化に貢献

 ヤフーの第一の使命は、国内最大ポータルして、ネットユーザーの大多数を満足させる最大公約数的なサービスを作ること。一部のユーザー向けの“遊び”の入ったサービスや、先鋭的なサービスは作りにくいため、その分外部の技術者に期待している。

 宮崎さんは「次の検索をどうするか考えたときに、検索サービスで色々と遊んでくれるような“ギーク”に聞いてみる、というのはポイントだと考えた」とし、外部の技術者とオープンに対話しながら検索の次の形を模索する考えだ。

 「ヤフーから一方的、マスメディア的にサービスを出すのではなく、ユーザーがヤフーのサービスを素材として自由に料理し、ヤフー“を”コントロールする時代が来つつある」(宮崎さん)。これは「Web 2.0」の考え方にも合致するという。堀江さんは「少し言いすぎかもしれないが、ヤフーがAPIを公開することで、日本でのWeb 2.0の定義も進化するかもしれない」と話す。

 同社は今後もAPIの公開を進めていく予定。YDNのメーリングリストやスタッフブログなどを活用し、技術者同士の交流も深めていきたい考えだ。「メーリングリストに、APIを使って作った新しいサービスや質問をどんどん投稿して欲しい」(宮崎さん)

photo 左から堀江さん、伊藤CTO、吉川さん、宮崎さん

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