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チップ内蔵ボール、ワールドカップでは出番なし

» 2005年12月07日 17時56分 公開
[IDG Japan]
IDG

 選手たちが喜ぶかもしれない決定が下された。国際サッカー連盟(FIFA)は、2006年ワールドカップ大会で新しいチップ内蔵ボールを使わないことに決めた。

 このボールは12月に東京で開かれる世界クラブ選手権でも使用されないとFIFAは12月5日、独Adidas-Salomonとの共同声明で発表した。Adidasは両大会に公式ボールを提供する。

 「この技術はまだ完ぺきではない」とAdidasの広報担当ジャン・ルナウ氏は語る。「当社はまだこれに取り組んでいるところだ。完ぺきに機能するという確信が1000%なければ、プロサッカーの試合に導入することはできない」

 このスマートボールに取り組んでいる技術者は、この技術が2006年のワールドカップに間に合うと期待していた。

 10月に独Fraunhofer Institute for Integrated Circuitsのパフォーマンス最適化システム担当ディレクター、ガンター・ローマー氏は、この技術は数カ月前からニュルンベルクのメインサッカースタジアムで、最近ではペルーのFIFA U17世界選手権でテストされていると語った(10月26日の記事参照)。このとき同氏は「この技術はうまく機能している。2006年のワールドカップ大会で使われると楽観視している」と語っていた。

 FIFAとAdidasは共同声明の中で、「最高レベルの大会で使う前に、さらなる開発とテストに力を入れる」ことにしたと述べている。

 ルナウ氏は、スマートボールがプロの試合で使えるようになる時期についてはコメントを控えた。

 スマートボールはAdidasがFraunhofer Institute、独ソフトメーカーCairos Technologiesとともに開発している。

 この技術はASIC(特定用途向け集積回路)チップにデータを送信する送信機を統合したものをベースにしている。このチップは加速と衝撃を避けられるよう、ボールの中につり下げられ、ボールがゴールラインを超えてから1秒もしない間に審判の腕時計に無線信号を送信する。

 選手のすね当てに埋め込むために、同様の、もっと小さくて平たいチップも設計されている。

 ニュルンベルクスタジアムでは、12本のアンテナが会場中に分散した柱などに取り付けられ、チップから送信されるデータを集めている。このアンテナは高速光ファイバー回線に接続され、データはこの回線を通ってLinuxクラスタに送られる。

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