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素人だらけの“IT劇団” ネットの力で超満員ITは、いま(2/4 ページ)

» 2006年03月03日 15時54分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「素人の劇団員がもがいて“演劇人”になっていくさまを、サイトを使ってドキュメントしたかった」(宮崎さん)。ネットが見知らぬ他人同士を結びつけ、何かがゼロから生まれる。それをまるごと見せることで、新しいエンターテインメントの可能性をアピールしたい。ゼロから始めるためには、素人でなくてはならなかった。

 演劇をやりたい素人は、思った以上にいた。公式サイトやGREE、mixiで募った応募者は、予想の倍の100人弱。うち60人あまりがオーディションを受けた。

 応募者も素人なら、審査員も素人。演技を見る目はなかったため、ワークショップ形式にした。グループでゲームをした後、即興劇を作ってもらい、コミュニケーション能力やリーダーシップを見た。

画像 オーディションの様子

 合格したのは19〜41歳の10人。ほぼ全員が初対面で、学生も社会人もいた。そのうちの1人、フリーのWebディレクター・水波桂さんは「変人ばかりだった」と笑う。個性の光るメンバーだった。

 素人のキャストは、素人演出家の宮崎さんのもとで稽古を始めるが、早速壁にぶち当たる。台本読み→立ち稽古というセオリー通りの流れに、演劇の基礎のないキャスト達は付いて来れなかった。

 公演まで時間がない。でもこのままではヤバい。基礎訓練に1カ月を費やすことに決めた。発声練習や滑舌の訓練、エチュード(表現力を養うための寸劇)を繰り返し、基礎を叩き込んだ。台本読みに戻ったのは、公演まで4カ月を切ったころ。ギリギリの状態で、厳しい稽古が続いた。

「身銭は切らせない」

 素人だらけのブサイコロジカル。は、資金面でも異例だった。劇団本体の収入で運営費用をまかない、劇団員が身銭を切らなかったのだ。「劇団=劇団員がアルバイトして運営費を捻出する」という苦しそうなイメージも払拭したかったと、宮崎さんは言う。

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