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ラジオの映像、国境を越える

» 2006年10月06日 15時14分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ラジオ番組を作っていて、思うことがある。「絵があったらなぁ」

画像 ネット配信用の機材

 1999年1月、エフエム東京(TOKYO FM)は初の動画配信に踏み切った。音のプロも、映像は素人。機材を買い込み、ノウハウを学ぶところからスタートした。

 ラジオ局が映像を作るなんて何の意味があるんだ――そう言う人も多かった。だが「デジタルラジオやブロードバンドが当たり前になるころには、映像とラジオは切っても切れない関係になる」と、同社の春山宏明さん(編成制作局番組制作部専任部長)は考え、映像制作のノウハウを身につけておくべきと判断した。

 配信したのは、はなわさんや森口博子さんが出演し、同社のホールで行っていたお笑いライブ番組「リスナーズスタジオH800」だ。当時はナローバンド環境で、配信帯域は56kbps。動きもカクカクしていたが、それは確かに映像だった。

 それから2年後の2001年4月、ラジオ番組の公開生ライブと映像のネット配信を連動させた音楽ライブ番組「LiveDepot」(パーソナリティー:大江千里)をスタートした。ラジオ音声とネット映像は同時中継。ネット映像は、放送終了後も一定期間、Webサイトからオンデマンドで視聴できる。

画像 春山さん

 楽曲や映像のネット配信が今ほど盛んではなかった当時、配信に理解を示してくれるアーティストを探すのもひと苦労だった。「出演してくださった方には、本当にありがたいと思っています」。実績を積むにつれ、「この人も出たなら」と出演をOKしてくれるアーティストも増えてきた。

 映像は、TOKYO FM内でテレビ用にも編集し、東京のローカル曲・TOKYO MX(東京メトロポリタンテレビジョン)でも放送する。「テレビ局と比べれば貧弱な機材だから、ぎりぎりの品質」というが、テレビの基準にできるだけ近づけるよう、映像機材も強化した。

 出演者にとっては、1粒で2度も3度もおいしい番組とも言える。ラジオのライブを1回行うだけで、ネットにもテレビにも露出できる。中国とパラオの提携ラジオ局にも配信しており、海外にも流れる。EBU(ヨーロッパ放送連合)を通じた番組交換プログラムにも参加。BBCなど海外テレビ局で放送される可能性もある。

 海外から感想が届くことも少なくない。海外リスナーを意識し、Webサイトに英語版も作った。

画像 観覧申し込みが殺到したKANのライブ

 人気のコンテンツは“ロングテール的”だ。テレビによく出るアーティストよりも、テレビにあまり出ないが固定ファンを持つアーティストのライブに、観覧申し込みやアクセスが集中する。9月28日に開いたKANのライブには応募が殺到。100人近くの立ち見が出た。

 当初は56kbpsと300kbpsだった配信帯域には1Mbpsも追加。ブロードバンド化が進み、高画質な動画が届けられるようになった。とはいえ、映像があるからといってラジオをおろそかにしないことが大前提。「ラジオでは見ない部分を、言葉で伝えていきたい」という。

 観覧に来た人の顔写真を撮らせてもらい、Webサイトにアップする取り組みも始めた。今後は、Webの双方向性を生かした企画をさらに行っていきたい考えだ。

LiveDepotの放送時間

  • ラジオ: TOKYO FM 毎週木曜日午後8時〜8時55分
  • テレビ: TOKYO MX 毎週火曜日深夜(水曜日早朝)2時半〜3時25分
  • ブロードバンド:FM放送と同時にWebサイトでライブストリーミング。放送終了後4週間はオンデマンド配信。
  • 海外:パラオ共和国 エコパラダイスFM、中国向け国際放送

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