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ネットで「銚子電鉄を救え」 名物「ぬれ煎餅」に注文殺到

» 2006年11月21日 19時45分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「銚子電鉄を救うために『ぬれ煎餅』を買おう」――ネット上でこんな運動が盛り上がっている。運行ダイヤ維持のための資金繰りに窮し、副業の「ぬれ煎餅」販売で資金を集めようと努力する千葉県のローカル線・銚子電鉄(銚子電気鉄道)を救おうと、巨大掲示板「2ちゃんねる」(2ch)のユーザーなどが次々にぬれ煎餅を購入。注文が殺到し、銚子電鉄は嬉しい悲鳴を上げている。

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 「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」。11月15日夜、銚子電鉄の公式サイトトップページに、切実なメッセージが掲載された。内容は「法定検査の費用が捻出できず、来年の元日以降、現在のダイヤで運行できなくなるかもしれない。社員一同努力するが、お客様にも『ぬれ煎餅』や鉄道グッズの購入をお願いしたい」というもの。社長と従業員連名の訴えだった。

 銚子電鉄は、銚子〜外川間の6.4キロを運行するローカル鉄道で、1日72本(36往復)運行している。近年は赤字続きで一時は廃線も考えたが、沿線住民からの「維持してほしい」との要望は根強く、グッズ販売などの“副業”で支えてきた。

 1995年に名産の醤油を使ったぬれ煎餅(820円)販売を開始。これがヒットし、廃線の危機も乗り越えた。鉄道事業の年商約1億1000万円に対して菓子類販売はその2倍以上、2億5000万円を稼ぎ出している。

 だが車両の老朽化が進み、5億円以上の設備投資が必要に。「社長を始め、社員の給料をぎりぎりまで削っても、借入金の返済に消える」という状況になった。そんな折、前社長が業務上横領の疑いで逮捕され、その借金も背負うことになりいよいよ困窮。法定点検の費用もまかなえなくなった。

 点検が必要な車両は、最低でも3台。うち1台は今週中に、残りは12月初旬までに発注する必要があった。費用は1台あたり最低でも200万円。鉄道事業の集客力は一朝一夕には高められないため、素早い現金化が可能なぬれ煎餅販売に力を入れようと決め、公式サイトに15日、その旨を掲載した。

 サイトで銚子電鉄の窮状を知った2ちゃんねらーが「鉄道板」を中心に支援の輪を広げ、関連する板でも伝えられていった。掲示板では、ぬれ煎餅やグッズの購入が次々と報告されているほか、販売店の情報をまとめたり、在庫のある店舗を伝えたり、銚子電鉄を応援するイラストを描いたりなど、さまざまな形で支援が行われている。

「資金、足りなくても何とか運行します」

画像 ぬれ煎餅。「普通味」5枚入り410円、10枚入り820円。「うすむらさき味」5枚入り430円、10枚入り860円

 銚子電鉄によると、ぬれ煎餅のネット注文は普段は1日1〜2件程度だが、15日から21日までの約1週間で約2000件もの注文が殺到。「卸している店からも追加注文をいただいている。わざわざ銚子まで来て買ってくださった方もいる」とスタッフは感激する。

 「当社のために、お友達・兄弟などにもぬれ煎餅の購入をお願いしていただいているとご注文メールに書いてありました、また『がんばれ』という激励のオーダーメールも、そしてたくさんのご注文、心にしみております。感謝しております」(同社Webサイトより)

 とはいえ、ぬれ煎餅は10枚入りでも820円。1台点検するための最低費用・200万円分だけでも2000袋以上売らなくてはならない。銚子電鉄は「今回の売り上げで費用がまかなえるかどうかはまだ分からない」としながらも「ここまで応援していただいて『運行できませんでした』とは言えない。足りなくても、何とか切り詰めるなどして運行を続けたい」と覚悟を決める。

「銚電熱」冷めた後も続く支援を

 銚子電鉄の社員数はわずか24人で、大量の発送作業が追いつかない。本社の事務機能も一旦停止させ、日常業務終了後に他部署の応援も借りて作業しているが、発送はどうしても遅れてしまうという。

 「今朝(21日朝)注文をいただいた分は、発送まで20日ほどかかってしまう。ただ、注文の際に『大変でしょうから、発送は急がなくていいですよ』と書いてくださっている方も多くてありがたい」(銚子電鉄)

 2chでは「今回、銚子電鉄が一時的なブームで危機を乗り越えても、また資金難がやってくるのでは」と心配する声も上がっており、長期的に支援する方法を探る議論も盛り上がっている。

 「いまの『銚電熱』が冷めた後、ちょとだけでもリピーターが増えてくれたらいいな」(2chの書き込みより)

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