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岐路に立つCeBIT

» 2007年03月19日 12時11分 公開
[Eric Lundquist,eWEEK]
eWEEK

 覚えている人はほとんどいないだろうが、ブログが普及する以前、展示会に足を運んだ記者は、それだけで1本の記事にするほど大きくはないが、読者にとっては十分興味深い展示会情報について、どこかでちょっとした記事を執筆したものだった。これは、ドイツのハノーバーで開かれたCeBITの取材について、そんな記事をまとめたものだ。

 まずは現在の主催者から始めよう。会場には26の展示ホールがあり、40万人の来場者が訪れるが、最初に立ち寄るのは管理棟だ。ここではDeutsche Messe副社長のスベン・ミヒャエル・プルーザー博士がCeBITという大型船の舵をどう取るかを画策している。大規模な展示会は近ごろ、特にCOMDEXという大きな存在が消滅した後は、疑問視されるようになった。6000以上の展示があり、エンタープライズからコンシューマーまで幅広い分野の技術を網羅し、英語(ビジネス用のデフォルト言語)は広く使われているが一次言語ではないCeBITで、的を絞るのは難しい。

 プルーザー氏の計画は、B2Bに焦点を当て、「デジタル界をリードするビジネスイベント」にすることだと、同氏は会場の上にそびえる管理棟でコーヒーを飲みながらの取材に応えて語った。個々の製品への興味が薄れ、ソリューションへの関心が高まる中、プルーザー氏の話では、展示会は来年、大きく様相を変え、主要テーマとして4つのソリューション分野に焦点を当てる。新興技術、エンタープライズソリューション、公共セクター、デジタルライフスタイルの4つを主要分野として、会場でグループ化し、カンファレンスプログラムでもスポットを当てる。

 わたしの意見はこうだ。ソリューションにスポットを当てるのは結構。だが一部の大手ベンダーが展示会場から姿を消したり撤退する中、プルーザー氏ら関係者は、予想とリソースの帳尻合わせという大仕事に取り掛かろうとしている。わたしが会場を歩き回った2日間から判断すると、彼らには確かに、勝負に出るだけの強みはある。

広範囲な国際参加

 今年のCeBITではロシアがとても大きな存在になっている。この国は現金を豊富に持ち、強力な知的・技術的基盤を持ち、米国を除くほとんどどの国との取引にも(わたしの知る限り)ずっと前向きだ。ロシアのウラジミール・プーチン大統領は出席する予定だったが姿を現さなかった。しかし、ロシア連邦情報技術通信相のレオニード・レイマン氏が出席し、ロシアのIT輸出が昨年の18億ドルから2010年までに100億ドルに伸びるとの予想を語った。CeBITはまた、クロアチアやイラン、ポーランド、ドバイといった国が自国の能力をアピールする場でもある。ほかのどの展示会でもこれほど幅広い国際主義は見られない(ここでは中国の存在感が非常に大きい)。米国企業はCeBITを、製品紹介の場としては利用せず、出展はほとんど欧州の子会社任せにしているようだ。

標準の確立

 インターネット時代には、製品発表はドードー鳥のごとく絶滅に向かいつつある。記者の一団を送り込んで新しい製品を見せるというやり方は、誰もが必要な情報をWebで取得できる時代にあっては意味をなさない。しかし、標準がどう確立されるかには変化が起こりつつある。かつて、世界は米国で標準が確立されるのを待っていたものだった。米国は結局のところ、圧倒的最大のエレクトロニクス市場であり、企業にとっては自社製品が米国で通用すると確信できるまで待つのが賢明だった。今は違う。欧州の官僚主義を皮肉った冗談はたくさんあるが、欧州連合(EU)は標準策定において強い力を持っている。特にプライバシー、セキュリティ、環境保護についてこれが言える。EUの基準は今では米国の数年先を行っているようであり、ITベンダーはEUの基準に合わせて製品の設計を変更している。CeBITは標準に関する論議を本当に面白くできるだろうか。これは難しい。

業界横断的なアプリケーション

 モーターショーは自動車の技術について語る場として優れている。家電展示会は最新の製品を見る最適の場だ。しかし、真に興味深いアプリケーションとは、業界横断的なものだ。運転時に方向を示してくれるだけでなく、歩き回っている時に現在地を教えてくれ、心拍を測定し、パリ旅行についてのビデオブログを記せるような携帯型の位置情報システムは、多数の業界を横断する。アプリケーションについての見方を広げることが、展示会やイベントにとってチャンスとなることもある。

 ベンダーはこうした変化のすべてに投資収益率を見出せるだろうか。キッチンとバーが付いた2階建てブースに今でも喜んで金を出すだろうか。それとも、スリーピースに身を包んだ顧客が小切手帳を手にその年のIT機器を買いに来た、最初のころの展示会に戻りたいと思うだろうか。その答えは来年以降に見えてくるだろう。

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