ITmedia NEWS > ネットの話題 >

オンラインビデオの公正使用ガイド、米団体が策定

» 2008年07月09日 11時28分 公開
[ITmedia]

 オンラインビデオのマッシュアップやリミックスなどに著作物を許可なく使用する場合、どこまでが公正使用(フェアユース)なのか――米アメリカン大学ソーシャルメディアセンターがガイドラインを策定した。

 同センターはこの「オンラインビデオにおける公正使用の最良慣行」を、現在受け入れられている慣行をまとめたガイドであり、公正使用権の境界線を定めるものではないとしている。クリエイターやオンライン企業、著作権保有者など、オンラインビデオ制作に関心を持つ人々が著作権の公正使用の原則を解釈する手助けをするものだとし、公正使用として認められている6つの慣行を挙げている。

  • 著作物の論評、批評:ただし、批判としての機能を果たさず、視聴者の好みを満たす手段となるような広範囲な使用は避けるべき。

  • 著作物を図解や例に使う:引用は必要な範囲を超えてはいけない。出典を明記すると、苦情や訴訟の可能性は低くなる。

  • 著作物が偶然含まれてしまった:結婚披露宴で著作権付きの音楽が演奏されており、それをビデオ撮影した場合など。著作物が関心の中心として注目を集めるほど、広範囲に使用してはいけない。可能であれば、著作物の出典を記す。

  • 体験、出来事、文化的現象の記録、保存、救済のための再生、再投稿、引用:テレビやイベントで芸能人や政治家などが問題発言をした場面やゲームプレイ動画など。著作物の複製が、記録目的としては不釣り合いな分量に及んだ場合は公正使用に当たらなくなる。

  • 作品について議論するために、作品あるいはその一部を複製、再投稿、再回覧する:複製、投稿の目的が議論であることを明確にする必要がある。視聴者が、投稿者の意図が議論を喚起することにあると理解していなければならない。

  • 複数の要素を組み合わせて、各要素の(あり得そうにない)関係に意味を持たせた新たな作品を作る:マッシュアップ、リミックス、既存の作品に新たな表現を加える場合など(例えば、2人の政治家のスピーチとラブソングを使って「ブッシュとブレアのエンドレスラブ」というビデオを作る)。著作物を組み合わせることで新たな意味が生まれる場合は公正使用となるが、文脈や意味を大きく変えない単なる再利用は公正使用の範囲を超える。例えば、著作権で保護された楽曲をビデオのサウンドトラックとして丸ごと使う場合は公正使用には当たらない。

 また同センターは、公正使用にまつわる以下の誤解についても説明している。

  • お金を得ていなければ、公正使用である:作品をごく内輪でのみ共有するのであれば法的に不利にはならないが、それを超えると、収益を得ていなくても公正ではなくなる。

  • お金を得ている場合(あるいは得ようとしている場合)は公正使用ではない:非営利、個人利用、学術利用だけが公正使用ではない。著作物の無断利用が公正であると裁判で判断されたケースのほとんどは、営利目的のプロジェクトに関係していた。

  • 公正使用はエンターテインメントには適用できない:公正使用の条件を満たしていれば、エンターテインメントコンテンツであるかどうかは重要ではない。

  • 作品の使用許可を受けようとすると、公正使用権を放棄したことになる:本来なら必要ないのに、著作者に使用許可を求めたような場合でも、公正使用権の行使は可能。

  • 公正使用を主張するには弁護士が必要:弁護士はたいてい依頼人のリスクを軽減しようとする(著作権法の場合、著作物の使用許可を得ることを考える)が、依頼人が権利を主張したいと言えば、弁護士はそのための助言ができる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.