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北京五輪開幕に向け、Googleら検閲に協力のネット企業への批判高まる

» 2008年07月22日 11時55分 公開
[Roy Mark,eWEEK]
eWEEK

 米下院議員のクリス・スミス氏(ニュージャージー州選出・共和党)は7月16日、インターネット企業が圧政に協力することを禁じることを目指した自身の法案に新たな支持者を得た。この法案に対する米国議会の反応は鈍かったが、欧州議会のオランダ人議員ジュール・マーティン氏が支持を表明した。

 米国会議事堂でスミス議員とともに記者会見したマーティン議員は、スミス議員の「グローバルオンライン自由法案(リンク先はPDFの英語文書)」をモデルとした法案を、欧州議会に提出すると発表した。同法案は、インターネット利用を制限している国家に対してGoogleやYahoo!のような企業が、個人を特定できる情報を開示することを禁じる内容。

 「欧州は言論の自由をインターネットの根幹として推進しなければならない。五輪開催が迫っている現在、特にそれが言える。ネット検閲に欧州のインターネット企業が関与することをめぐっては、透明性を高める必要がある。インターネットにおいても人権は、罰則を定めた法律を通じて保護する必要がある」。マーティン議員はこう語った。

 スミス議員も自らの法案を推し進める根拠として北京五輪を使っている。4月に開いた国境なき記者団との共同会見では「ジャーナリストと人権保護活動家を守るため行動する必要がある。さもなければ、五輪が終わって世界中の注目が薄れた後、彼らが次の犠牲者になるかもしれない」と力説した。

 7月16日の会見でスミス議員は、7月31日の五輪開幕前に法案の採決を行うようナンシー・ペロシ下院議長に促した。「不幸なことに、これら大企業は世界最悪級の独裁政権と手を組み、加担している。われわれにはあまり時間がない。やるべきことは1つ。ペロシ議長が法案を公示すればいいのだ。われわれは勝てると思う」

 スミス議員の法案は10月に下院外交委員会を通過したが、その後失速した。ペロシ議長事務所の広報は、同法案ではまだやるべきことがあると説明している。これに匹敵する法案は上院にはなく、ブッシュ政権も支持していない。

 スミス議員はペロシ議長の対応について「善意を期待している」としながらも「だが時間切れが迫っているのも事実だ。投獄され、拷問され、殺されるかもしれない次の政治犯に、時は味方してくれない」と訴えた。

 マーティン議員が欧州議会に法案を提出し、スミス議員がペロシ議長と対立する中、Amnesty International Australiaも五輪を使って中国の人権保護を訴えるソーシャルメディアキャンペーンを展開中だ。Amnesty Internationalは北京五輪開幕に向けてオーストラリアのブログやソーシャルメディアグループ向けのコンテンツを用意した。言論の自由を支持する証として友人同士で広めて使ってもらう。

 Amnesty Internationalは発表資料で「ソーシャルメディアキャンペーンを使い、インターネットにおける報道と表現の自由を妨げている中国の検閲法にGoogle、Yahoo!、Microsoftが従っていることに抗議する」と述べている。

 米Yahoo!は2年ほど前から、同社が中国政府に提供した情報がもとでジャーナリストの師濤(シ・タオ)氏が10年間も投獄されることになったとして非難されてきた。師氏は中国語新聞の記者・編集者で、国外のWebサイトであるDemocracy Forumに、中国政府によるメディアと民主主義運動家弾圧についての情報を仮名で投稿し、自宅で逮捕された。Yahoo!が師氏の電子メールアカウントの情報を、IPアドレスとログオン履歴、メールの内容も含めて提供した後、中国政府が北京で師氏の居所を突き止めた。

 Yahoo!はその後、師氏の家族から起こされた訴訟を和解に持ち込み、米国議会の公聴会で師氏の母親に公式謝罪した。

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