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きっかけはMBA留学 上場のベンチャーリパブリック率いる2人

» 2008年08月26日 07時00分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 柴田啓社長(左)と柴田健一副社長

 価格比較サイトなどを運営するベンチャーリパブリックが8月7日、大証ヘラクレスに上場した。「よくここまで来た。これからが本番だ」――柴田啓社長(42)は、創業時からの目標だった上場を果たし、感慨深げだ。

 同社の事業は、PC関連製品の価格比較サイト「パソconeco」(現「coneco.net」)から始まった。現在はconeco.netに加え、旅行比較サイト「Travel.co.jp」、通販カタログの掲載商品を検索・比較できるサイト「通販.ne.jp」なども運営している。

 coneco.netは月間約400万ユニークユーザー(UU)、Travel.co.jpは月間約200万UUに成長した。サイト経由で商品情報が閲覧されたり商品が購入された際、同社に広告収入が入る仕組み。Travel.co.jpの売上高が最大で、全社売上高の65%を占める。

 設立は2001年。創業時から柴田健一副社長と二人三脚で歩んできた。名字が同じなのは偶然で、それぞれ1990年代後半に米ハーバード大学のビジネススクールに留学した経験を持つ。

ネットバブル期の米国に留学

画像 柴田啓社長

 2人が留学したのは、米国がネットバブルに沸いていたころ。同じビジネススクール出身だが、当時は面識がなかった。

 「グローバルに通用する力を身につけたい」――柴田社長は96年〜98年、当時勤めていた三菱商事の社内制度を使って留学した。「人的ネットワークが広がり、ネットビジネスの最前線を知ることもできた。企業価値の高め方や物事の分析法も学んだ」

 柴田副社長は98年〜00年に留学。それ以前は日本生命で働いていた。ベンチャーキャピタルの仕事にあこがれ、MBAを取得したいと考えたという。

 そのころ米国では「Amazon.com」や「eBay」などが注目を集めており、ビジネススクールにもネットビジネスについて学ぶ講座があった。2人はネットビジネスが台頭していく様子を目の当たりにし、起業を志していく。

価格比較サイトに注目した理由

画像 柴田健一副社長

 初対面は2000年。「似たようなビジネスアイデアを持っている人がいるから会ってみない?」――柴田社長はビジネススクールの後輩から柴田副社長を紹介された。

 そのアイデアが、価格比較サイトを運営するというものだった。柴田社長は米国で価格比較サイト「mySimon」をよく利用していたという。

 「ネットがなかった時代、例えば冷蔵庫を買うにも、家電量販店をいくつも回り、店員から説明を受けて良いものを探す――と1日がかりだった。あっという間に情報を集められる価格比較サイトに引かれた」

 「物を買うときには徹底的に調べる性格」という柴田副社長は「誰でもする価格比較という行為が、これまでビジネスにならなかったのに、ネットをきっかけにビジネスになりそうだというところに注目した」と振り返る。

「NET de 通販」と「価格.com」

画像 coneco.net

 柴田社長は日本の価格比較サイトについても調べ、「NET de 通販」と「価格.com」という2つのサイトを見つけた。

 当時価格.comは、秋葉原のPCショップなどを歩いて回って価格情報を集め、サイトに掲載するというスタイル。NET de 通販は、独自の検索エンジンを使ってネット上から製品の価格情報を集め、掲載する仕組みだった。両サイトを比べ、気になったのはNET de 通販。「米国ではNET de 通販のような手法が伸びていたから」だ。

 静岡県に住むNET de 通販の運営者・大石泰礼さんに会いに行き、2人は意気投合。起業から3カ月後の2001年4月、NET de 通販の検索エンジンを強化してサイト名を「パソconeco」に変更し、ベンチャーリパブリックの第1弾サービスとしてオープンした。

 大石さんは今も、同社のプロダクト&サービス事業部長として、主に通販.ne.jpの運営に携わっている。

coneco.netの特徴は「情報量とポイント制度」

画像 小判

 パソconecoはオープン後約1年半ほど、ほとんど売り上げがなかったという。「まだネットで物を買う時代ではなかった。出資してくれたベンチャーキャピタルから叱られたり、冷ややかな目で見られたりした」

 月間UUは当初数万だったが、ブロードバンドが普及するに連れ増えていった。柴田社長は「現在の400万UUも、もっと早い時期に達成できると思っていた。日本にブロードバンドが広まって、オンラインショッピングが普及するのに思ったより時間がかかった」と振り返る。

 ほかの価格比較サイトの違いは情報量の差という。「あまり名前が知られていないような店の価格情報から、大手のショッピングサイトや家電量販店サイトの情報までくまなく網羅している」と自信を見せる。

 同社のポイントサービス「小判」と連動していることも特徴だ。小判は、加盟しているサイトで買い物したり会員登録すると貯まり、現金に換えられるというもので、coneco.netでも使え「お得感が高い」

「初志貫徹する情熱が大切」

 創業時から上場を目標に準備を進め、8月7日に上場した。資金調達とサイトの知名度向上が目的。初値は公開価格割れだった。柴田社長は「ある程度は予想していた。市場の評価を真摯(しんし)に受け止め、今出来ることを着々と進めていくだけ」と話す。

 「創業して2年間ほどは苦労したが、価格比較サイト以外の仕事には手を出さなかった。苦しいこともあるが、軸足をぶらさない、初志貫徹する情熱が大切」。今後は価格比較サイトの商品分野を拡充するなど、事業を拡大していく。

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