うーん、後付けの理由だなぁ。まぁ結果はどうあれ、新しいものを作ってみたという。それが面白いかどうかはよく分からんと。作りたいものを作ったという。ユーザーは誰も「欲しい」とは言っていませんからね、そんなもの。
――「広場」はネット上に“群衆”を再現する「クラウドメッセージング(Crowd Messaging)」だと言っていましたが。
そもそも「クラウドコンピューティング」がそんなメジャーなキーワードじゃないじゃないですか。「Web2.0」を笑うというならまだ分かるんですけど、クラウドコンピューティングを知らない人にクラウドコンピューティングをもじっても仕方がないというか。かなり分かりづらかったとは思いますが。
――「個人での利用に特化する形で発展してきたネットの進化の逆を行き、多くの人が共通体験を持つ“社会”に進化させていく」とも言っていました。
集団での共通体験自体は、ニコ割とか、ニコニコ動画の中でずっと言ってきたんですけど、広場はその延長で。とりあえず「人数多くしたら面白いよね」というのが何となくあって、とりあえず理論武装してみようという後付けな感がありますね。。
――みんなが集まってしゃべる場は「2ちゃんねる(2ch)があればいい」という声もありますが。
2chとニコ動って、ユーザー層の差は歴然としてあると思うんですよね。例えば「モバゲータウン」を使うような人は2chには来ないという。ニコ動を見るという若い人たちと、2chで「ちゃんとした文章で議論したいです」という人たちは層が違うと思っていて、違うところで作っていると違うカテゴリで楽しめるのではないかなと思うんですけど。
――ββのもう1つの目玉は、ユーザーがニコニコ生放送を制作できる「ユーザー生放送」でした。狙いは。
生放送を自分たちでやっていて気付いたのは、あまり面白くないネタでもユーザーの反応に出演者が返すだけで間が持ったりするということで。「これはユーザーが作ってもぜんぜん使えるんじゃないかな」というのがあったので。
ニコ動は「動画を制作してアップロードするツール」で、動画を作る能力ってコンピューターを使って編集する能力に依存すると思うんですよ。
でも生放送みたいなのって生身の人間の面白さに依存すると思うんです。動画を制作する能力はないけど面白いことが言えるとか、歌がうまいとか、人間としての何らかのスキルがあるけど動画を作る能力がない人も、ネタとしていじれるようになるという。そういうところで面白いと言われる人が多分出てくるんじゃないかなと期待しているんですけど。
――ニコニコミュニティは、コミュニティメンバー同士で動画投稿したり投稿者コメントなどを編集できる「共同作業機能」を付けるなど、大幅に機能強化されました。
動画の作者がコメントで叩かれたりした時、自分だけでコメントのメンテナンスをするのがすごいめんどくさいから、誰かが手伝えるようにすればいいんじゃね、という発想で「動画を複数人で管理するツール」を考えた時、「いちいち動画ごとに設定するんじゃなくて、コミュニティあるんだからそれを使えばいいじゃん」となって、コミュニティを強化することにしました。
「これの管理お前がやれよ」とか「明日俺やるから」というやりとりとか、「この動画いつ上げよう」とか、内輪的なやりとりに使われるんじゃないかなと。
――でもコミュニティ機能ってあんまり使われてないですよねぇ。
そうですね。もともとの思惑が遠いところにあって、それを実現するための最低限の機能を作ったんですけど、最低限すぎて目標まで達していない。
もともとニコ動ユーザーが2chから来たような人が多かったのもあって、言葉使いが荒い、放送禁止用語が多い、すぐに誹謗中傷するという傾向がありました。そういうのが気にならない人は使えていたと思うんですが、一般化していく上でそういうのが嫌いな“スイーツな方々”をいかに呼び寄せるかというのが課題で。
コミュニティみたいな形で「自分たちの心地良い発言しかしません」という人たちでグループを作っちゃって、その人たちで見たいものを見るという方向にすれば、汚いものを見なくてすむという方向になるかなー、という思惑で作ったんですけど、作ったところで完全に放置していて。
今回、コメントを複数人で管理できる機能を追加しようとしたとき、コミュニティ機能を思い出して、白羽の矢が立ったというわけです。
――ユーザーが「ニコニコポイント」を使ってお気に入りの動画をPRできる「ニコニ広告」も始まります。狙いは。
動画制作をする人の支援にコミュニティを使うのと同じ感じで、動画を目立たせたりするのも動画を作る本人じゃなくてもいいんじゃないかってあたりから実現してみた感じです。
広告スペースは企業向けに販売すればもっとお金が取れるんですが、価格を決めるとか、タグごとに広告を変える(ニコニ広告は、タグごとに設定できる)のも大変……ってのもあったりして。
――動画を提供するコンテンツホルダー企業が、フジテレビジョン(予定)やTBS系などテレビ局を含めて121社に増え、「公式動画」が「ニコニコチャンネル」になりました。これはドワンゴ顧問の夏野剛さんの力が大きいのでしょうか。
夏野マジックですね。TBSとフジさんに仲良くしてもらって良かったなと。楽天がTBSともめて、フジテレビとライブドアがもめて「ネットとは付き合わないといけないけどどこと付き合ったらいいだろう」という時にニコ動がたまたまいいポジションにいたという。今後も八方美人に生きていきたいと思います。
――夏野さんは「黒字化担当」を自認されていますが、ニコニコチャンネルはお金になるということでしょうか。
ほかのものがお金にならないので……。テレビメディアが下がりつつあって、DVDが売れなくて、レンタルビデオ屋でも借りなくなって、コンテンツを作る人たちの出口のうち既存のやつがあんまり芳しくない状態で、ほかに何か新しい手段があるかというと特にない。ネットは未知数なので「ネットに賭けるのはありじゃね?」というのが、コンテンツホルダー側にも薄々、思惑としてあったと思うんです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR