Second Lifeがメディアで話題になり、企業参入が盛り上がり始めた2007年3月、ITmedia Newsは「Second Life“不”人気、7つの理由」という記事を掲載した。Second Lifeは話題先行で、メディアや参入企業が期待するほど利用されていないという内容で、その理由を
(1)始めるまでの手続きが面倒
(2)要求PCスペックが高い
(3)操作が難しすぎる
(4)何をしていいか分からない
(5)何をするにもお金がいる
(6)右も左も広告だらけ
(7)人気の場所はエロかギャンブル
――と7点挙げた。
2年経った今、Second Lifeの環境は大きく変わっている。この7点はどう変化したか、1つ1つ検証してみよう。
07年3月当時Second Lifeは、クライアントソフトをインストールし、英語インタフェースでプロフィールを入力してアカウントを作成したり、アメリカ風デザインのアバターを選ばなくてはならなかった。利用できる名前にも日本人名が少なく、アバターや名前に親しみを持ちづらかった。
現在もクライアントソフトのインストールは必要だが、プロフィールの入力は日本語で可能に。日本語の丁寧なガイダンスも付いており、アカウント作成のハードルは大きく下がっている。アバターのデザインも改善しており、日本人にも抵抗ないデザインのものもある。名前に日本人名が少ないことは変わっていない。
07年当時、非力なPCだとクライアントソフトのインストールができなかったり、動作しないといったことがあった。
現在は、PCの推奨スペックは当時とほとんど変わっていないが、「3Dアイテムを制作するなど重い処理をしない限り、Netbookでも問題なく動く」と米Linden Labの日本担当責任者ジェイソン・リンクさんは話す。
300Mバイトあったソフトは22Mバイトまで軽量化し、動作の安定性も増した上、当時よりPCの平均スペックが上がった。サーバも増強したため「ほとんど落ちなくなった」(リンクさん)こともあり、ユーザーがストレスを感じることは少なくなっているようだ。
Second Lifeは操作が複雑で難しい。2年前、操作を習得するには、最初にアクセスするガイダンス島「Orientation Island」で、英語の解説看板を読み解くしかなかった。専用ブラウザもデフォルトでは英語。日本語化には面倒な操作が必要な上、英語のままのメニューもあった。
現在、最初にアクセスする場所は、Orientation Islandから日本企業が作ったガイダンスSIMに変わっており、操作法を日本語で習得できるようになっている。専用ブラウザのメニューはほとんど日本語化され、ユーザーインタフェースは従来より分かりやすくなっている。
操作法を習得しても何をしていいか分からない――この問題はさらに深刻になっている。
ブーム当時は、報道などでSecond Lifeを知って1人で参加する初心者が多かった上、企業の新規参入が相次いでいたため、初心者同士でコミュニケーションしたり、企業SIMを見に行ったりといったこともできた。
だがここ最近は1人で参加する初心者は減っており、企業の新規参入の話題もないため、一通り操作法を習得した後はどこに行けばいいか、途方に暮れてしまう。
最近は友人から誘われ、操作法や遊び場を案内してもらったり、アバターの着せ替え法を教えてもらっている人が多いようだ。「ブーム当時はデフォルトのアバターの人も多かったが、最近は2日目にはアバターを着替え、おしゃれになっている」とSecond Lifeベンチャー・マグスルの新谷卓也社長は話す。
Second Lifeは無料で楽しむには限界があり、アバターの着せ替えたり、土地を持って家を建てたり、手持ちの画像などを使ってオリジナルアイテムを作ったり――など、Second Lifeを一歩踏み込んで楽しもうとするとお金(仮想通貨・リンデンドル)が必要になる。
Second Lifeを楽しんでいる人は、ある程度のお金を使うことに抵抗のない人のようで、現在もその状況は変わっていない。お金をかけず、特に目的もなくプレイしようという人は、早々に飽きてフェードアウトしてしまうようだ。
ブーム当時はSecond Lifeには、ユーザー規模に見合わないほど多くの企業が参入しており、企業がPRのために作った広告SIMが数多くあった。だが今はほとんどの企業が撤退しており、広告SIMは減っている。
Second Life内で商売をしているクリエイターなどが、自分の作品を宣伝する看板などはよく目に付く。Second Life内だけで完結する仮想経済は、成長を加速している。
2年前は、アダルトコンテンツとギャンブルが人気だったが、現在はギャンブルは禁止され、アダルトコンテンツは規制が入ったため、これらのコンテンツはなくなるか、目立たなくなっている。
――このように、2年前のSecond Lifeの課題のうちいくつは改善・解決している。今後、Second Lifeが再びブームを巻き起こせるかは、課題のさらなる改善と、3Dインターネットに対するユーザーニーズの動向にかかってくるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR