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2つの「Apple」、iTunesとビートルズ

» 2010年11月17日 01時08分 公開
[ITmedia]

 米Appleとビートルズの因縁は深い。ビートルズの管理会社である英Apple Corpsが商標権の侵害を主張し、米Apple Computerに対して最初の訴訟を起こしたのは1978年。3年後に和解に至るが、この時の条件は「米Appleが音楽事業を行わないこと」だった。

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 米Appleの社名は、創業者のスティーブ・ジョブズCEOがビートルズファンだから命名したという説もある(ジョブズ自身は明らかにしていない)。だが企業としての米Appleと英Appleは、法廷で戦いを繰り返してきた。米Appleが自社製品にMIDI機能などを搭載したのを問題視し、英Appleが「和解条件に違反している」として訴訟を起こしたこともある。

 当然、米Appleが2001年に発売したiPodや、iTunes Music Store(当時)による音楽配信を英Appleが許すはずもない。2003年、英Appleは米Appleに対して英国で訴訟を起こした。

 この訴訟は2007年2月、両社による和解の発表で終結する。「Apple」という名称は米Appleの商標となり、スティーブ・ジョブズCEOは「当社はビートルズを愛しており、彼らの商標に関して対立する関係にあるということはいたたまれないものだった。この件について、前向きで将来についてもいさかいを起こすことのない解決の仕方ができてすばらしい気分だ」とコメントした。

 英Appleも「我々にとって未来は非常にエキサイティングなものになる。Apple Inc.の成功を望んでおり、ずっと平和的な協力関係を継続していきたい」と述べた。こうしたコメントから、ビートルズ楽曲の配信も始まるのでは──と期待した向きは多い。

 ポール・マッカートニーのソロ作品は05年1月には配信がスタートしており、和解成立後の07年6月には、ポールが出演するテレビCMを米Appleが放映している。ジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターのソロ作品も順次iTunesで配信が始まっており、「ビートルズ配信が始まる」とのうわさは、iTunesをめぐる季節の風物詩のようなものだった。

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 今度こそ──と盛り上がったのが昨年の9月。米Appleのイベントに合わせ、配信が始まるとオノ・ヨーコが英メディアに語ったとされるが、結局、この時はなし。それから1年が過ぎ、初代iPodが発売されてからちょうど9年になる11月17日(日本時間)、ビートルズがiTunesにやってきた

 米AppleはiTunesでのビートルズの配信開始を「明日、いつもと同じ一日が、忘れられない一日になる」(Tomorrow is just another day)と予告した。それはビートルズを深く愛しながら、ビートルズの会社と戦いを繰り返してきたスティーブ・ジョブズCEOの、素直な喜びなのだろう。

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