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日本通信、携帯キャリアのMNPキャッシュバックに「公開抗議」 1年間の最低利用期間設ける

» 2012年03月22日 11時37分 公開
[ITmedia]

 日本通信は3月22日、同社の音声付きSIMサービスの全てに1年間の最低利用期間を設定したと発表した。同社のサービスを“踏み台”に使い、携帯電話事業者各社がMNP(番号ポータビリティ)による転入者に対し支払うキャッシュバックを得ているケースがあるためで、同社は「携帯キャリアの過度なMNPインセンティブに対する公開抗議」だとしている。

 同社の音声付きSIMサービスのうち、「talkingSIM U300」と「talkingSIMプラチナ」(マイクロSIM版を含む)の提供条件を変更し、3月20日午後4時以降の申し込みについて、1年間の最低利用期間を設定し、1年未満の解約には1万500円の違約金を徴収することにした。

 ただ、同社は「問題提起を行うことで、携帯キャリア自身が自律性を発揮すること、または総務省が事後規制として何らかの対策をとることを期待」しており、「あくまで一時的」な措置だとしている。

儲かるキャッシュバック

 利用者獲得競争の激化で、携帯販売店がMNP転入者に3〜7万円のキャッシュバックを支払うプロモーションを実施しているケースがある。多額のキャッシュバックを得られれば解約手数料を支払っても“利益”が出るため、ネットではキャッシュバックを活用した“副業”のさまざまな手段が語られている。こうしたキャッシュバックの原資は既存ユーザーが支払う携帯料金でもあるため、「普通に使っている既存ユーザーが馬鹿を見ている」のでは、という指摘も多い。

 日本通信の音声付きSIMには最低利用期間がないものがあったため、これを申し込み、その直後にMNPで別の携帯キャリアに転入すれば数万円のキャッシュバックを入手できることになる。

 最低利用期間がないSIMも、契約事務手数料と通信料、MNP手続き手数料を徴収しているため、「短期間でのMNPによる転出があっても、経営的には問題ない」という。だが「通信業界の健全な発展に貢献するためにMVNO事業モデルを実現し、この事業モデルによって今後の成長戦略を推進していく企業」として、携帯業界の「過度なMNPインセンティブ」について問題提起するという。

 同社によると、「携帯料金は以前は認可制だったためこうした問題は起きえず、起きても適切に対処され、全ての利用者に公正な料金が適用される仕組みになっていた」が、競争促進の観点から法改正が進み、事前規制から事後規制へと法改正が進んだ。「事前規制を廃止した以上、事後規制が正しく機能されなければならない」として、携帯キャリア、総務省に対し問題を提起している。

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