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「市場を公正なものに」「CDが売れるようにはならない」──著作権法改正案、参院で参考人質疑(1/3 ページ)

» 2012年06月19日 17時02分 公開
[ITmedia]

 違法ダウンロードに刑事罰を導入する著作権法改正案が衆議院を通過し、審議は参議院に移った。参院文教科学委員会は6月19日午後、違法ダウンロード刑事罰化について参考人質疑を行い、参考人からは「日本の文化を守るために不可欠だ。ネットのルールも万引きが罰せられるリアルと同じでなければならない」「刑事罰化に違法ダウンロード抑止効果があるのか慎重に議論すべき」と賛成・反対の立場から意見が出た。

 参考人として招致されたのは、岸博幸・慶應義塾大学大学院教授、日弁連の市毛由美子事務次長、コンテンツビジネスに詳しい久保利英明弁護士、インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事の津田大介さん。

「ルールもリアルと同じでなければならない」──岸教授

 岸教授と久保利弁護士は賛成の立場から意見を述べた。

photo 岸教授

 岸教授は賛成の根拠として3点を挙げた。まず「日本の文化を守る点から不可欠。良いコンテンツ、良いアーティストに資本投下したレコード会社が正当に報われるようにしなければならない。ネットで無料入手できる環境は改める必要がある」とした。

 また「コンテンツを流通させるネットビジネスを発展させる、ベンチャーが成功できる環境を作るためにも市場を公正なものにしなければならない。価値あるものにはお金を払うものにしなければならない」ことを挙げた。「コンテンツはなるべく無料でいい」という、「アメリカのネット企業などが作った価値観」がそのまま入ってきている状況で、「日本企業が日本型ビジネス作っていかなければならない。そのためにも市場を公正なものにしなければならない」と指摘する。

 さらに「ネットは特別なものだ、リアルとは違うという価値観が広がってしまっている。ネットがこれだけ生活やビジネスに不可欠になってる以上、ルールもリアルと同じでなければならない」として、違法ダウンロードは「リアルの店で万引きするのと同じ」と指摘。「リアルでは万引きすれば捕まる。本来有償で売られているものを違法と知りながらただで入手することに対してバランスを失している。そこを改善することがネットとリアルを同じ環境にすることからも大切だ」とした。

 違法サイトへの削除要請の手間や海外サイトへの対応が難しいことなどからも、違法アップロード側だけの刑事罰では無理があるのではと指摘。「違法ダウンロードだけが音楽業界が悪化している理由ではないが、現実に悪影響を与えている」として刑事罰導入を求めた。

「日本のコンテンツビジネスはもたない」──久保利弁護士

photo 久保利弁護士

 久保利弁護士はコンテンツビジネスに長年携わり、政府の知的財産戦略本部に参加した専門家として「刑事罰をもってダウンロードまで規制しないともう日本のコンテンツビジネスはもたないのではないか」と危機感を表明。いわゆる総会屋が刑事罰の導入で減ったことを例に出し、刑事罰を導入することで違法ダウンロードを「やってはいけないこと」と周知し、「国は適切に刑事的な権限行使することでまっとうな国にする。そういう前提で刑事罰を作るのは何も悪いことではない」とした。

 久保利弁護士は、違法ダウンロードに対する罰則「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」については「おおむね妥当だと思う」とし、「未成年が1件か2件やるくらいで立件するのは異常な捜査官の判断だ」として、少数のダウンロードで立件されるような事態にはならないとした。

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