連日続く中国における反日デモ。過去の反日デモ隊が暴徒と化すことはよくあるが、今回は窓ガラスという窓ガラスを破壊し尽くし、デパートの店内やホテルを荒らし尽くし、一部の日系企業の工場やディーラー販売店をも破壊し尽くした。その映像や写真をテレビやネットで見た人なら、モラルのなさ過ぎる暴徒にただただ驚かされたことだろう。
この情報だけ見た日本人は「中国人は反日だ、暴れる人間も随分いて中国人は恐ろしい」と思うかもしれない。一方で中国人の知人がいる日本人や、中国在住の日本人は「いやそんなことはない、多くの中国人は実に友好的だ」と言っている。実際暴動に反対する中国人もいる。中国各地域に住んでいる日本人、中国人の発信する情報は、いずれも「尖閣諸島は中国のもの」と中国人は信じているものの「反日デモに参加しない人が多数派だ」というものだった。
まずは「尖閣諸島国有化」について、反応の大きさを数字で紹介したい。中国ナンバー1検索サイト「百度」(Baidu)はGoogleトレンドにそっくりな、検索傾向がわかるサービス「百度指数」をリリースしている(その百度はトップページのロゴを尖閣諸島+中国国旗にしている。その画像にアクセスすると特集ページに飛ぶ)。
中国国民がこれ以上なく一致団結したと思われる2008年の「四川大地震」というキーワードでは、指数は瞬間的に30万近い数字を出した。だが今月11日、尖閣諸島の中国名である「釣魚島」というキーワードはその3倍以上となる93万に上った。日本政府が尖閣諸島の国有化を発表した上、これに中国政府が猛反発したこともあり、「戦争になるのではないか」という不安が老若男女問わず中国人の間を駆け巡ったことも、93万という前代未聞の数字の一因となっている。
この数字(つまり人々の尖閣問題に関する関心)がどれだけ大きいのかを知るには、ノンフィクション作家・安田峰俊氏のブログ記事で面白く説明されているので一読を勧める。
次に「反日デモに参加しない人が多数派」ということに触れたい。日本でも原発やフジテレビの“韓流偏重”への反対の声が総じて大きいように、中国でも「母国の領土が侵略された、しかも歴史的怨敵日本」ともなれば、ネット上で見られる反日コメントは圧倒的になる。デモの結果は大暴動となったが、その画像は日本など中国国外のメディアだけでなく、中国国内メディアでもある程度は報じられた(とはいえ掲示板や中国のマイクロブログ「微博」に掲載された写真によるデモレポートの一部は管理者により削除された)。
その報道の中で、暴力デモに反対する動きも登場した。中国人にして「同胞があまりに愚かすぎて悲しくなった」「その様はまるで『義和団』のようであり『文化大革命』のようでもあった」と表現している。デモ発生前は、リアル・ネットを問わず「デモ反対」の声を上げればデモ推進派に圧倒される状況だった。しかし写真やビデオで目の当たりにしたリアルなレポートは、多くの中国人にとってもあまりに衝撃的なものだったようだ。ネットでは「反暴力・反暴動」「しかしながら『尖閣諸島は中国のもの』という主張は崩さぬ理性ある愛国」を訴える一般庶民も多く確認できるようになった。
先月、愛国を叫ぶ暴徒を「愛国ではない害国だ」と政府が非難した(この辺は「『愛国ではない、害国だ』 尖閣デモと公用車襲撃を否定され困惑する中国ネットユーザー」を見て欲しい)。今回の大規模な反日デモにおいては、愛国を叫ぶ暴徒をネットユーザーまでも「害国」扱いしている。
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