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中国政府、自国の“ネット右翼”に困惑し始める 嫌がる人も多い“憤青”(2/3 ページ)

» 2013年02月25日 15時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

 ネットだけでなくリアルでも同じ話をよく聞かされた。義烏という街がある。100円ショップで売られるようなモノが世界一集積する街で、日本だけでなく中東諸国からもバイヤーが買い付けに来る。そこで働くスタッフいわく、日本人バイヤーは反日が怖いから韓国人になりすますものの、商談の途中でやってくる電話に「はい、はい」と答えるので日本人だとすぐに分かるとのこと。ある日本人は「すみません(対不起=ドイブーチーだったりSorryだったり人によりけりだそうだ)」と謝るのだが、「謝られる義理はない、政治は政治、ビジネスはビジネス、庶民には島のことなど関係ない」とスタッフは韓国人になりすますことをケラケラと笑う。実はこういう人はかなりいる。

 中国政府は近年Twitterに似たマイクロブログ「微博」(ウェイボー)の動向に注意している。振り返れば2011年の年末に「『中国の不思議なTwitter』で締めくくる2011年の中華IT事情」という記事で、この年から特に中国政府は微博のネット世論動向に注目するようになったと書いた。

 さまざまなな不祥事やデモがあっという間に伝播するようになったため、火消しのための地方政府や警官によるアカウントが大量に作られた。さらにネット世論に関する部署「人民網輿情観測室」ができ、ネットで話題になっている事件と火消しがしっかりしているかというレポートが出されるようになった。この辺は「『愛国ではない、害国だ』 尖閣デモと公用車襲撃を否定され困惑する中国ネットユーザー」に記した。

中国政府が抱く民粹(ポピュリズム)への懸念

photo 人民網が掲載した昨年12月に掲載した「中国の発展を脅かすポピュリズム」という論評

 そんな中国では、昨年末に人民網から興味深いレポート「中国公衆民粹化傾向調査報告(2012)」がひっそりと出た。人民網は中国共産党の機関誌「人民日報」で知られる人民日報社のメディアだ。

 「民粹」というのはポピュリズムのことで、また、民粹化イコール憤青化としている。民粹(=ポピュリズム)は年末あたりからが使われ始めていて、人民網日本語版でも12月に「中国の発展を脅かすポピュリズム」という日本語記事の中で「反日デモで暴れた暴徒」との関係性を書いている。すごくざっくりいえば中国政府による「2012年中国ネトウヨ調査レポート」であり、「はたして日本絡みで扱いが面倒なネトウヨはどれだけいるのか」というレポートである。

 それによると、アンケートをとった人々のうち、49.5%がポピュリストの素質があり、そのうちの31.3%はポピュリスト的な特性が顕著で、18.2%はポピュリストの傾向にあるという。日本のテレビでも何度となく報道された、中国の街頭でシュプレヒコールをする人や、ネットで日本叩きをしそうな人は全人口の半数近くいるということらしい。男女比では男性が55.8%と女性より多く、地域別ではポピュリストは都市部より農村部に多く、在外華人では都市部よりもさらに割合が低くなり、21.7%まで落ちる。

 年齢では、25〜33歳までのグループはポピュリストの傾向が低めで4人に1人程度。多いのはインターネットを利用しない中高年で、54〜63歳では2人に1人がポピュリストという結果だった。「所得が低い」「学歴は専門学校卒」「仕事は職人ないしは保安」でポピュリストの割合が高いという。所得が高ければ高いほどポピュリストである率は少ないが、高所得でも政治に興味があるグループではポピュリストが多い。

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