この3月、RSSに関連する大きなサービスが相次いで終わりを迎えた。3月5日にTwitterのRSSフィードが終了。3月14日にはGoogleが、RSSリーダー「Google Reader」を終了すると発表した。
これらの動きを受けてネットでは、RSSについての議論が盛んになっている。「RSSは時代遅れ」「RSSリーダーは終わる」といった論調もある。
だが、ニフティのブログサービス「ココログ」や、はてなのソーシャルブックマーク「はてなブックマーク」など、RSSに関連するサービスを多く手がけてきたフリーエンジニアの伊藤直也さんは、「RSSも、RSSリーダーも終わらない」と話す。
そもそもRSSとは何だろうか。サイトの更新情報を届けるための規格と説明されることも多いが、「更新を取ってくる機能は、RSSの性格の1つに過ぎない」と伊藤さんは解説する。
RSSは「RDF Site Summary」(RDF形式のサイトの概要)という名の通り、Webサイトの概要を、構造化して公開するためのメタデータの仕様だ。記事のタイトルや、ページのURL、概要などの決まった要素を、決まった文字コードや書式で表現し、コンピュータ同士でやりとりできるようにしている。
Webサイトを作成するための言語であるHTMLは、記述の自由度が高く、サイトによって構成がまちまち。HTMLを読み取っても、サイトの概要がどこにあるのかコンピュータには判断しづらい。一方で、サイトが自ら、その概要をRSSで公開(フィード)していれば、コンピュータはRSSフィードを受け取るだけでそのサイトの概要を正確にとらえることができ、さまざまな処理を行うことができる。
RSSは1999年に登場し、2000年代前半には仕様がほぼ固まっている「枯れた技術」で、ライブラリや細かい仕様の違いを吸収するツールもそろっている。「RSSはコンピュータとコンピュータの間をくっつけるためのパーツで、技術用語で言うと“glue”(のり)。エンジニアから見ると1つの部品、極めて使いやすい部品なんです」
RSSリーダーは、「サイトの概要をコンピュータで読み取れるようにする」というRSSの機能を活用したアプリケーションの1つだ。サイトやブログがRSSを配信していれば、読者はRSSリーダーにフィードを登録することで、サイトの新着記事の概要を受け取ることができる。
Webサイトを対象にした自然言語処理の研究にも、RSSはよく使われる。サイトのHTMLを直接読み取って自然言語処理を行おうとすると、HTMLタグと文章の見分けが付けづらかったり、広告など余計な要素が含まれてしまうが、RSSなら“余計なもの”が入らない、混じりっけのないテキストを対象にできる。
RSSは検索サービスにも使われている。例えば、Chromeの検索窓に「amazon」と入力し、続けて「tab」キーを押し、キーワードを入力すると、Amazon.co.jpの商品をそのキーワードで検索した結果が表示される仕組みは、RSSで受け取ったAmazonの検索結果を、ChromeがHTMLで表示しているのだ。
ネットラジオなどを携帯音楽プレーヤーに配信するポッドキャストも、RSSが実現した仕組みの1つだ。音声や動画などテキスト以外のマルチメディアファイルをひも付けられるRSSの機能が、動画や音声の更新情報を携帯音楽プレーヤーに届けるポッドキャストを可能にしている。
ネットサービスのさまざまな場面でRSSは「空気のように使われている」(伊藤さん)。Google ReaderやTwitterのRSS配信という個別のサービスが終わるからといって、RSSの機能が失われるわけでも、RSS自体が“終わる”わけでもない。
そもそも、Google ReaderやTwitterのRSS配信が終わる本当の理由は、第三者からは分からない。各サービスの終了には「何らかの政治的意図があったはず」で、RSSという規格そのものの盛衰とは別次元の話だ。
TwitterがRSS配信を廃止したのは、同社がAPIガイドラインを変更し、すべてのAPIの呼び出しにOAuth認証を必須にしたタイミングと同じだ。認証が必要な場所にRSSフィードを置いておいても、一般のRSSリーダーで読み出すことができない上、TwitterはJSON版のAPIも提供しており、更新情報の通知機能はそちらで代替できる。
「Twitterは、プライベートな場所でRSSフィードを出しても誰も使えず、コンピュータのリソースが無駄な上、JSON版のAPIを残しておけば、RSSが担っていた役割はすべて担えるからやめただけだろう。RSSが古いとか、使えないからやめたのではない」
GoogleがGoogle Readerを終了する理由も、さまざまに推測されているものの、実際のところは分からない。「はっきりしているのは、GoogleにとってGoogle Readerがそんなに重要ではなかったということだけ。2011年にCEOが、エリック・シュミットからラリー・ペイジに変わった時、Googleは、ユーザーにとってより重要なものにサービスを絞る経営体制に変えると宣言しおり、Google Readerの終了はその一環だろう」
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