皆さんは「カップ焼きそば現象」という言葉をご存じでしょうか。
「オリジナルの模倣品・代替品などが、オリジナルとは別の魅力・需要を持ちうること」をそう呼ぶことがあるそうですが、こんな言葉が生まれるくらいカップ焼きそばは完成度が高い食品です。そこで今回は「日清焼そばU.F.O.」「ぺヤングソースやきそば」「明星一平ちゃん夜店の焼そば」の“カップ焼きそば三国志”について、無料家計簿アプリ「ReceReco」(レシレコ)の購買データ分析を通じて考察してみたいと思います。
スマートフォンでレシート写真を撮るだけで家計簿を作れる無料iPhone/Androidアプリ。リリース後1年間でダウンロード数は130万、登録レシート枚数は2200万枚、登録された支出総額は500億円を超えている(2014年1月時点)。なお、登録されたレシートデータを個人が特定されない範囲で二次利用することは全ユーザーに事前許諾済み。
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まずは全国の勢力図から見てみると「U.F.O.」「ぺヤング」「一平ちゃん」がほぼ均等にシェアを取り合っています。その中で「U.F.O.」がややリードしている状況ですが、頭一つ抜けているというような差ではなく、予想以上に拮抗した戦況と言えそうです。
そこで今度は地域別に見てみると、興味深い様子が浮かび上がってきました。全体の数字はほぼ互角だったにも関わらず、地域別では勝敗がくっきり出ています。
ざっくり言うと、東日本ではペヤング(75年発売、まるか食品は群馬県で創業)が優位に戦いを進め、西日本ではU.F.O.(76年発売、日清食品は大阪府で創業)のシェアが高まります。そして一平ちゃん(93年発売、明星食品は東京都で創業、現在は日清食品の子会社)は全国まんべんなく堅実に戦いを進めています。
これはかつて「東のぺヤング&西のU.F.O.」の2強だった戦いに、後発の一平ちゃんが必殺技「からしマヨネーズ」で敢然と割り込んだ――といった構図でしょうか。
さらに、ぜひ注目しておきたいのは中部地方のシェアです。なんと、ほぼ全国平均と同じ勢力図になっており、日本の中心がまさに戦力の均衡の縮図になっていることがうかがえます。この展開はドラマチックですらありますね。
そんな各地で熱いバトルを繰り広げている3強ですが、実は局地戦ではその3強すら圧倒するダークホースが北海道と東北に存在します。それは、連載第1回の「年越しそば対決」で日清と激闘を繰り広げていた東洋水産「マルちゃん」シリーズの「やきそば弁当」と「焼きそばバゴォーン」です。
これらは北海道と東北のシェアで見ると3強を大幅に上回るシェアを獲得しており、特に北海道における「やきそば弁当」の強さは驚異的です。カップ焼きそばでも確実に局地戦で白星を稼ぐ東洋水産の地力、恐るべしです。
今回はデータから眺める“カップ焼きそば三国志”をお届けしました。最初はふとした思いつきで調査を始めてみたのですが、途中から本当に、王者U.F.O.が「魏」、名門ペヤングが「呉」、からしマヨネーズで急成長した一平ちゃんが「蜀」、マルちゃんコンビが「北方騎馬民族」――のように思えてきて、興奮しきりの分析となりました。
平野健児
1980年京都府生まれ。神戸大学文学部卒業後、サイバーエージェントを経てWeb関連の新規事業支援で独立。WebサイトM&Aの「サイトストック」など多数の新規事業を立ち上げる。現在はブレインパッドにて無料家計簿アプリ「ReceReco」(レシレコ)の立ち上げ、運営を手掛ける。
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