11月21日から23日まで開催された「2014楽器フェア」(東京ビッグサイト)。YMOのライブセットを再現した「YMO楽器展2014」、その声がVOCALOID化されたことでも知られるX JAPANのギタリストhideさんのギター展などを眺めつつ、iOS化で復活した数十年前のシンセサイザーを確認してきた。
まずは一部メディアで先行して取り上げられていながらプレスリリースが出ておらず、メーカーサイトにもその情報がない、iOS版の「Sound Canvas」をまずチェック。
Sound Canvasとは、ローランドが1991年から販売しているDTM用音源の元祖・本家と言ってもよい製品シリーズで、SC-55、SC-88といった名器を生み出し、数多くのデスクトップミュージシャンが育っていった。このサウンドフォーマットである、GS音源が事実上の標準として、NIFTY-ServeのFMIDIをはじめとするパソコン通信で、作成した音楽データが流通していた(業界標準としてはGM音源というのがあり、それをローランドが拡張したもの)。現在のボカロブームの源流にはこのシリーズがあったといっても過言ではない。
だが現在、この製品の実機は販売されていない。この製品をベースにしたソフトウェア音源「VSC-88H」は販売終了してからすでに7年が経過。最新の対応OSであったWindows XPの終了に伴い、今ではアップデータのダウンロードもできない。また、VSCはSound Canvasのハードウェア性能をフルに再現しているわけではなく、音質やエフェクト、同時発音数などで制限があった。
「Sound Canvas for iOS」は、VSCをiOSに移植したのではなく、実機を現在の技術で近づけようと新たに開発されたアプリだ。ローランドのブースでは、iPadとiPhone上で動作していた。担当者に聞くと、ユニバーサルアプリだという。
SC-88 Proの後期モデルをベースに作っているが、DTM(デスクトップミュージック)という言葉を生み出したシリーズである「ミュージ郎」にバンドルされていた音源であるCM-64にも対応。「ミュージ郎のデータをそのまま再生することもできる」という。昔のMIDIデータが残っていれば、それをDropboxなどに転送しておけば、アプリ内から呼び出して再生できるそうだ。
自作データやパソコン通信でダウンロードしたものが残っていない人向けには、SCシリーズに対応したMIDIデータの販売も予定している。同社が公開しているiOSアプリでは、音楽データを購入できるものがあり、アプリ内課金で購入したデータをSound Canvas for iOSで再生可能にする予定だ。
実際に「紫の炎」などの当時MIDIデータが流通していた曲を聴いてみると、たしかにあの頃のサウンドである。オーケストラデータとして「Back To The Future」を流していたのはあの時代に回帰ということかもしれない。細かいところはいろいろ気にする熱心なユーザーも多いので、「完全互換」とはしていないが、再現度は高そうだ。
iOSで動作するためチャンネル数が最大16という制約はあるものの、音色を細かくコントロールするシステムエクスクルーシブなどはそのまま使えるという。デモではWi-Fi経由のMIDIでデータを再生。CoreMIDI対応なので、iOSデバイスに接続できるMIDIキーボードなどから演奏できるし、GarageBandなどのアプリとの連動も容易だ。
GS音源、GM音源を再生できるiOSアプリはすでにいくつか出ているが、「本家」とも言えるローランドの主力製品再現であり、ニーズは高そうだ。来年早々には発売される見込み。ただし、現時点で価格は未定だ。
ローランドがかつての名機を再現することにようやく意欲的になってきたことの現れであり、ほかのシーケンサーやシンセも期待できそうだ。「ぜひCMU-800をiPadに対応させてください」と担当者にお願いしてきた。
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