その1つが、有志のユーザーが審査員になって「本当にうまい歌」を決める「ガチ歌ランキングバトル」という企画。「アプリ公開当初は運営側でランキング機能を提供していたが、再生数や拍手の数に応じて機械的にランク付けしていたため、どうしても“コミュニケーション上手”な人が上位になってしまって……。ある時『こんなのランキングじゃない』と、ユーザーたちでうまい歌を決める企画が自然発生的に始まった」(文原CEO)
ほかにも1つの歌をワンフレーズずつ歌い継いでいく「renga」(連歌)や、2チームに分かれて拍手の数を競う「nana紅白歌合戦」など、ユーザー発の企画が続々と誕生。さらには、声優オーディション風にアニメキャラになりきって質問に答える「声面接」、インタビュー形式の質問に次々と答えていく「50問50答」など、音楽とは無関係な楽しみ方まで生まれ続けている。
「ユーザー発の企画を盛り上げるために意識していることは特にない」と文原CEOは平然と言う。「サービス開始当初から、勝手に企画を立ち上げて盛り上がろうとしてくれるユーザーがいた。私たち自身もユーザーと一緒になって曲やコメントを投稿し続けてきたので、『運営も音楽が好きなんだ』『nanaを存続させるために盛り上げなきゃ』と思ってくれているのでは」とnana musicの安西結さんは話す。
さらに「サービスを始めるとすぐに『これはどうやって稼ぐんだ。自分なりに考えてみたから』とA4用紙でビジネスプランを持ってきてくれるユーザーもいた」(文原CEO)という。「ユーザーがオフィスに遊びに来てくれて、そこで一緒にセッションしたりとか。そういう動きが本当に自然に生まれ続けている」。
nanaユーザーの自由な活動はネットを飛び出し、リアルの世界にまで進出している。
「nanaで知り合ったのをきっかけに、一緒に音楽コンサートを観に行ったり、スタジオに入るような仲間ができることもある」と文原CEO。例えば、nana上でのコラボをきっかけに生まれた女性4人のコーラスグループ「nalienna」もその1つだ。グループ名は「nana」と「lien」(フランス語で「絆」)を組み合わせた造語で、「nanaで結ばれた絆」という意味が込められているという。
さらに、nanaでコラボレーションしているうちに仲が深まり、結婚した男女のユーザーもいるという。「13年ごろに男女で一緒にオフィスに来てくれたユーザーがいて。住んでいる地域もバラバラだったので『うん?』と思っていたら、『実は付き合っていまして』と(笑)。その1年後に『結婚しました』と報告があって、さすがにその時はびっくりしましたね」と安西さんは振り返る。
「一緒に歌ったり音楽を演奏するということは、すごく心理的に近づく部分がある」と文原CEO。「ユーザーから『サークルっぽいね』と言われることも多いが、nanaと似ていると個人的に思うのは“代々木公園”。みんなでギターと飲み物を持ち寄って自由にセッションしたり……。そこでできた音源の良しあしよりも、コミュニケーションが生まれることが大事だと思っている」。
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