ITmedia NEWS > STUDIO >

数字ばかりでうっとうしい「Excel」をアートの道具に 3D builderを使った最新のExcelアートを習ってきた太田智美がなんかやる

» 2017年01月13日 12時49分 公開
[太田智美ITmedia]

 Excelを使ってアートを生み出すスーパークリエイターがいる。若宮正子さん(マーちゃん)だ。彼女は「Microsoft Excel」の罫線や塗りつぶしを使いこなして絵や模様を描き、うちわや紙袋などオリジナルグッズを作っている。そんなマーちゃんにExcelアートの作り方を教えてもらった。


Excelアート (左)「マーちゃん」こと若宮正子さん、(右)筆者

Excelアート マーちゃんが作ったExcelアート作品

Excelアート マーちゃんが作ったExcelアート作品

 マーちゃんがPCを手に入れたのは、定年退職が近づいてきた1995年の春。銀行で働いていたマーちゃんは人と会っておしゃべりするのが大好きで、退職後90歳になる母の介護をするため家から出られなくなることを懸念していた。

 そんなある日、雑誌にこんなことが書いてあったという――「PCがあると、家から1歩も出ないでいろんな人とおしゃべりができる」。これを見て、当時高価だったPCを衝動買いしたという。

 そこからマーちゃんのPC生活は始まった。しかし、待ち受けていたのは難しい設定ばかり。教材を購入して学ぼうとしても、シニアにとってはつまらない教材ばかりだったという。おまけにExcelというソフトを開けば数字ばかり並んでいてうっとうしい。「それならば私が楽しいものを作ればいいじゃない」と5〜6年前に始めたのがExcelアートだ。

 彼女の作品は、編み物などの手芸をモチーフにした作品が多いのが特徴。特に、グラデーションやセルの結合、罫線のスタイルをうまく使い、作品ごとに素材感が異なるように見えるのが不思議だ。最近では、3Dモデルを編集するためのアプリケーション「3D Builder」を用い、これまでとは一風変わった作品もリリースしている。


Excelアート 3D Builderを用いた作品

Excelアート Excelアートで作ったオリジナルグッズ(うちわ)

Excelアート Excelアートで作ったオリジナルグッズ(キーホルダー)

 どうやって作るんだろう……そう思い、マーちゃんに連絡してみることに。教えてほしいとお願いすると、二つ返事で引き受けてくれた。

 マーちゃんはガラガラとスーツケースを引いて、アイティメディアを訪れた。その中から出てきたのは、MacとWindows、2台のPC。Excelを開くと、説明を始めた。


Excelアート マーちゃんのスーツケース

 まずは、下準備から。初心者は、列幅と行高さが「1対1」にするとやりやすいため、セルの大きさを均一にすることから始めるという。

 左上の角をクリックすると、表全体が選択され、列番号の間の境界線をスライドさせて列幅と行高さが「1対1」になるように調整すると、表全体が1対1の升目になる。ついでに、デフォルトで英字になっている列番号を数字にしておくといいとのこと。「ホーム」から「オプション」を選び、「数式」から「R1:C1参照形式を使用する」にチェックを入れると数字に変換される。


Excelアート 下準備

 あとは、パターンの種類を選択したり、「塗りつぶし」効果から「グラデーション」を選んだりすればいい。下書きなどは行わず、テーマのみを決め作りながら考えていくスタイルだ。

 1つモチーフができたらそれをコピー&ペースト。最後にふち飾りをしたら完成。大きく作っておいて全体を圧縮すると、また違うデザインに見えるといったテクニックもあるようだ。


Excelアート

Excelアート ここに3D builderを使って凹凸を付ければ、またひとあじ違った作品になる

 マーちゃんが1つのExcelアートを完成させるまでは約1時間。下書きを行わないため、やりたいと思っていたことと違うものができたり、思わぬ発見があったりと、日々自分の操作からできた模様に自分で「へー」と感心するという。


Excelアート

 「なんでExcelで絵を描こうと思ったんですか?」 その問いに、マーちゃんはこう答える――「昔から、Wordで絵を描く人がたくさんいます。Wordの方が、もしかしたら表現力があるかもしれません。でもそれとは別に、私は、制限があるのがおもしろいと思うんですね。人間だって、制限がある中で楽しくやっちゃうでしょう? 日本人に生まれたとか、女であるとか、高卒だとか。そういった制限の中で、自分のできることを発見する。楽しいですよ〜」。

太田智美

筆者プロフィール

プロフール画像

 小学3年生より国立音楽大学附属小学校に編入。小・中・高とピアノを専攻し、大学では音楽学と音楽教育(教員免許取得)を専攻し卒業。その後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科に入学。人と人とのコミュニケーションで発生するイベントに対して偶然性の音楽を生成するアルゴリズム「おところりん」を生み出し修了した。

 大学院を修了後、2011年にアイティメディアに入社。営業配属を経て、2012年より@IT統括部に所属し、技術者コミュニティ支援やイベント運営・記事執筆などに携わり、2014年4月から2016年3月までねとらぼ編集部に所属。2016年4月よりITmedia ニュースに配属。プライベートでは2014年11月から、ロボット「Pepper」と生活を共にし、ロボットパートナーとして活動している。2016年4月21日にヒトとロボットの音楽ユニット「mirai capsule」を結成。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.