1歳児の4割がスマートフォンなどの情報通信機器を使ったことがある――研究者や教育関係者などで構成する「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」は2月6日、そんな調査結果を発表した。
幼い子どもにスマホを渡して使わせる行為は「スマホ育児」や「スマ放置」などと呼ばれ、その賛否をめぐってネットなどでしばしば議論になっている。同研究会は、スマホやタブレットを利用する子どもの発育上のリスクを防ぎつつ、デジタルコンテンツによる学びを促進するには「保護者が一緒に見て反応することが大事」と指摘している。
乳幼児にスマホを遊び道具として与えている保護者はどれだけいるのか。同研究会が0〜6歳の子どもを持つ保護者を対象に行ったWeb調査(有効1149件)では、1歳児の41.8%、3歳児の60.3%がスマホなどの情報通信機器を利用したことがあり、0〜2歳児の56.3%は「毎日必ず」「ほぼ毎日」手にしていることが分かった。
スマホを用いた育児には、親の時間を確保できるといったメリットや、幼児教育に役立つといった声がある一方で、身体・精神の成長への悪影響を懸念する声もある。セキュリティソフトベンダー出身で同研究会の主幹スタッフを務める高橋大洋さんによれば、スマホ育児で考えられる懸念点のいくつかは、テレビやゲームと共通するという。
同調査によれば、幼児(0〜6歳)がスマホなどで利用するコンテンツは「写真や動画の閲覧」が中心だった。「幼児のスマホ利用はビデオ視聴が中心。これまでテレビやゲーム機で行っていたことが移行しただけで、従来のテレビとの付き合い方から学べることが多い」と高橋さんは指摘する。
また、幼児期は人がしていることをまねして覚える「観察学習」が大きな役割を果たすため、視聴するコンテンツは非常に重要だという。相模女子大学の七海陽准教授(学芸学部子ども教育学科)は、「3歳頃になると、テレビなどに登場するキャラクターへの同一視やまねが盛んになる。しかしこれくらいの年齢だと、善しあしの判断や現実と空想の区別がまだ十分にできておらず、善悪を同時に学んでしまう」と説明する。
では、子どもの精神になるべく悪影響を与えずに、スマホを育児に活用するにはどうすればいいか。
「幼児がコンテンツを見て反応したときに、何らかの変化や応答がある環境が発育上で重要。動画を見せたときに子どもが発する行動や言葉に保護者が応答したり、内容について話し合ったりすることが大事」(七海准教授)
幼児にスマホを持たせる行為については、視力など身体面への悪影響を懸念する声もある。実際、幼児によるスマホ利用で保護者が心配していることの第1位は「視力発達への悪影響」(59.2%、複数回答)だった。
七海准教授が紹介した資料によれば、生後1カ月頃の視力は0.02程度で、1歳頃に0.1、4〜5歳で大人と同程度の1.0程度までに発達していく。そのため、3D立体視機器は6歳未満の使用が禁止されているという。七海准教授は「幼児はテレビをすぐそばで見ようとするが、これは“見えていない”からだ」と説明する。
スマホ育児の是非をめぐってはさまざまな議論があり、中には保護者の管理責任を問う声もある。だが七海准教授は「保護者だけの責任ではない」と強調する。
「仕事と育児を両立する保護者にとって、スマートフォンは不可欠なツール。(ITツールを提供する側の)産業界でも配慮が必要だ。『常識的な範囲内で』とだけ言われても、保護者は困ってしまうだろう」(七海准教授)。
同団体は、3月までに本件の調査内容をまとめ、報告書をWebサイトで公開する予定だ。
子どもたちのインターネット利用について考える研究会は、子どもの携帯電話利用が社会問題化したのを背景に、保護者に情報提供することを目的として2008年に発足された団体。社会問題化しているテーマを年に1つ取り上げ、調査結果などをWebサイト上に公開している。
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