東京農工大学科学博物館で企画展「ヒトとロボット - 未来のカタチ」(5月27日〜9月9日/入場無料)が開催されている。この展示は、東京農工大学で行われている人間の運動科学に関する研究技術や研究成果を集めたもの。どんな研究がされているのか、気になったので行ってきた。
会場に入って、まず目に飛び込んでくるのが「脳波を使った文字入力・ロボット操作システム」だ。頭皮に電極を張り付け、画面にあるピカピカと点滅する文字を見ると、文字の入力ができる。
これは、身体の不自由な人の補助ツールとして研究されているもの。ヒトは「これ!」と思うと脳波が反応する。その原理を使って、文字ごとにわずかに変えてある光の点滅によって文字が入力される。
これと同じ仕組みを使って、脳波でロボットを動かすことも可能。PCの画面に「前」「右」「左」などのボタンを用意しておき、文字入力と同じように行きたい方向のボタンを見ることで操作できる。
こちらは、脊髄や鎖骨、肩甲骨などを再現したロボット。愛・地球博のときに作られたロボットで、当時デモ展示もされた。
特徴は、人間の骨格構造を模した造りになっていること。「人間と同じ構造でロボットを作ると、どうなるか」という研究だ。
「違う構造でも動けばいい」という考え方もあるが、この研究では「なぜ人間がこういう構造になっているのか」を研究することで、新たな発見があるのではないかと期待している。
例えば、関節が90くらいあるロボットでは既存の制御理論が通用しないのだが、人間の関節は200〜300もありながら二足歩行している。この制御理論が明らかになっていないため、あえて人間と同じ骨格構造を作り、研究しているそうだ。
二足歩行ロボットといえば、課題となるのが段差。ロボット競技大会でも、障害物として段差が用意されることが多い。ここに着目して開発されたのが、ロボットの足に装着する「足装具」。人間の土踏まずを真似した装具だ。
そもそも人間の足は、障害物に合わせて変形するようにできている。ロボットが凸凹した段差が苦手なのは、人間のように足裏が可変ではないため。そこで、ロボットの足裏に変形可能な装具を付けることで凹凸の歩行をしやすくしようというのだ。装具は3Dプリンタとバネのみで作られている。
最後に紹介したいのが、人の手の形に合わせて物を取ってくれるロボットだ。人は、物体の形状に合わせて物を取る手の形を変える。例えば、ペットボトルをつかむときと、ボールをつかむとき、コップをつかむときでは、無意識に異なる手の形を用意している。
そこで研究されているのが、アームロボットが手の形に合わせて希望するものを取ってくれるシステム。小型モーションセンサー「Leap Motion」を用いて人の手の形を認識し、そのデータに基づいてアームロボットは物をつかむ。
今回のデモンストレーションではアームロボットだったが、今後はヒューマノイドロボットに組み込んでいきたいとしている。
(太田智美)
小学3年生より国立音楽大学附属小学校に編入。小・中・高とピアノを専攻し、大学では音楽学と音楽教育(教員免許取得)を専攻し卒業。その後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科に入学。人と人とのコミュニケーションで発生するイベントに対して偶然性の音楽を生成するアルゴリズム「おところりん」を生み出し修了した。
大学院を修了後、2011年にアイティメディアに入社。営業配属を経て、2012年より@IT統括部に所属し、技術者コミュニティ支援やイベント運営・記事執筆などに携わり、2014年4月から2016年3月までねとらぼ編集部に所属。2016年4月よりITmedia ニュースに配属。プライベートでは2014年11月から、ロボット「Pepper」と生活を共にし、ロボットパートナーとして活動している。2016年4月21日にヒトとロボットの音楽ユニット「mirai capsule」を結成。
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