真偽不明の偽ニュース(フェイク・ニュース)が何かと話題を集めている。日本でも、DeNA(ディー・エヌ・エー)が運営していた医療系サイト「WELQ(ウェルク)」の問題を皮切りとして、さまざまなメディアでいまだにくすぶり続けている課題でもある。
2017年6月21日、東京都内で1つの団体が発足した。
「ファクトチェック・イニシアチブ・ジャパン」(FactCheck Initiative Japan、以下FIJ)は、メディアやジャーナリズムに関わる人々が業界の垣根を越えて集まった任意団体だ。
FIJの活動方針は、下記の3つ(FIJの配布資料から抜粋)。
海外では、GoogleがGoogle検索の結果およびGoogleニュースでファクトチェックのラベル表示を開始したり、Facebookがファクトチェッカーの警告表示を始めたり、既存メディアが協力して偽ニュース対策(CrossCheck)を行ったりと、メディアやプラットフォーマーなどがさまざまな活動を行っている。
FIJの発起人で事務局を運営する楊井人文(やないひとふみ)氏は、自身が立ち上げたマスコミ誤報検証・報道被害救済サイト「GoHoo」を引き合いに出し、「世界ではすでに116のファクトチェックWebサイトが稼働しているが、日本ではまだごく少数だ。国内でも、業界の垣根を越えて情報の真偽・検証に真剣に取り組む時期にきているのではないか」と、FIJの設立趣旨を説明した。
FIJが掲げるファクトチェックとは、
とし、ファクトチェックの目的を
とする。「私たちが志向するのは、人々が正確に判断できるような材料を提供することだ」(楊井氏)
FIJが目指すファクトチェックの対象は、実に広範囲だ。
膨大なファクトチェック対象に対して、どのように立ち向かっていくのか。
発起人の1人であるスマートニュース 執行役員 メディア事業開発担当の藤村厚夫氏が、FIJでのファクトチェック支援システムについて概要を語った。
「インターネット上の爆発的な情報量に対して、人力によるファクトチェックには量的限界という課題がある。そこで、機械学習や自然言語処理技術を活用したファクトチェック支援システムを整備したり、ファクトチェック情報が埋もれてしまわないよう、オープンに活用可能なシステム向けデータベース(API)を整備したり、各社独自のファクトチェック対策が乱立している現状を打開すべく、標準的なフォーマットにそろえていく必要がある」(藤村氏)
具体的な役割分担として、スマートニュースがファクトチェック情報のオープンデータ化とシステム間連携を提供し、東北大学の乾・岡崎研究室がファクトチェックすべき情報の解析と絞り込みを行い、FIJが日本のファクトチェック団体に情報提供するなどネットワーク化を手がけるのが当初の構想だ。
藤村氏は「スマートニュースで日々クロールしているソーシャルメディアなどの情報を、東北大学の乾・岡崎研究室の情報を組み合わせるイメージだ。ソーシャル上の情報の端緒を機械が選び、人間がファクトを判断する。最初に教師データありきではやっていかない。メディアに限らず、政治家やネットの情報が対象となり得るが、現状はソーシャル上の情報を集める。実証実験はここ1カ月以内に始めたいと考えているが、専門家が十分に検証した上で結果を公開していきたい」とし、「ゴールはオープンなスキーム作りだ。Googleなど、さまざまなところで情報提供に携わる企業の参加を求めていきたい」と抱負を述べた。
FIJでは今後の施策として、上記のガイドライン作成や支援システムの実証実験に加え、7月5日からスペインのマドリードでInternational Factchecking Networkが開く「Global Fact 4」への参加と報告会の開催、ファクトチェック事例やガイドラインのセミナー開催、FIJ法人化に向けたシンポジウムの開催、そして活動資金の募集を挙げた。
事務局の楊井氏は「FIJはファクトチェックの推進と普及も目指した協議体というあいまいなもので、自身がファクトチェッカーにはならない。ファクトチェックを支援する仕組みと、プラットフォームを提供していく」と語った。
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