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20年前、スカリーに聞いたジョブズのこと(復刻インタビュー)CloseBox(1/2 ページ)

» 2017年10月30日 16時22分 公開
[松尾公也ITmedia]

 先日開催されたAdobe MAXは大盛り上がりで、未来のPhotoshopに採用されそうな新技術も披露された。しかし、その陰で消えていったライバルたちも多い。ハンドリングが難しい高解像度データを楽々扱えることで一時期はPhotoshopの強力な対抗馬とうたわれたLive Pictureをふと思い出した。そこに出資していたのが元AppleのCEOだったジョン・スカリー。ジョブズを追い出したことと砂糖水で知られる人物だ。

photo 現在のスカリー

 Internet Archiveをサルベージしていたら、こんな記事が出てきた。1997年9月19日にMacWEEK(ITmediaの前身であったZDNet/JAPANのMac部門)に掲載されたインタビュー。今読み返してみるとわりと面白いので、復刻して掲載しよう。タイトルはこうだ。

ジョン・スカリーが答えるLive Pictureのこと、ジョブズのこと

 LivePix日本語版を発表するために来日中のジョン・スカリー氏にインタビューすることができた。ライブピクチャージャパンは1997年9月19日、コンシューマー市場をターゲットにしたフォトレタッチソフト、LivePixの日本語版を発表するが、Live Pictureの持つ技術をどのように生かしていくのかを解説してくれた。また、スカリー氏が「追い出した」と言われるスティーブ・ジョブズ氏が暫定CEOとして復帰したことについての感想を聞くこともできた。

松尾 Live Pictureを投資先に選んだ理由は何ですか(Live Pictureは2年後にMGI Softwareに吸収、それをさらにRoxioが買収し、RoxioはCorelに買収された)。

スカリー 私は新しい業界で、市場性があり、新しい技術があるところにしようと思いました。ちょうど、PostScriptが開発されたときのDTPのようなところです。これまで、Webはテキストが中心でした。写真の画像、動画像、高解像度のアニメーションといったものを使おうとすると、サーバが必要でした。Live Pictureはマルチレゾリューションデジタルネットワークイメージング技術を持っています。これは、サーバ側に非常に高解像度のイメージを保持しておき、そのバンド幅に合ったデータをそのクライアントマシンに送るのです。これは、われわれとMicrosoft、HP、Kodakらと共同開発し、さまざまな用途に使われていきます。これは、次世代のマルチメディア技術になるでしょう。

松尾 ハイエンド指向の当初の方向性を変えたのはあなたですか。

スカリー Live Pictureが創業されたときには、「次世代のPhotoshop」を開発しようとしていましたが、私はまったく興味が持てませんでした。私はその基本技術に興味を持ち、それをKodakに見せたのです。彼らはコンシューマー、エレクトリック・コマース、ネットワーク・パブリッシングをビジネスにしようと考えました。

松尾 マイクロソフトの参加はあなたが主導したのですか。

スカリー われわれはMicrosoftの多くの人と話をし、ビル・ゲイツのCorbisとも次世代の画像ネットワークをCorbisアーカイブに利用するために協力しました。Microsoftとは、FlashPixの開発段階で共同作業しました。

松尾 Live Pictureはあなたが参加してからいくつかの企業買収を重ねています。それらはどのように使われるのですか。

スカリー FlashPixには大きく2つの利用分野があります。まず、高品質の印刷出力です。スキャナやプリンタで使えますね。もう一つはコマーシャルマーケットです。インターネットに対応しています。狭い帯域のWebでダイナミックに画像を送信する技術。RealSpaceは、QuickTime VRの開発者が作った会社を買収して得ました。1997年はじめのことです。FlashPixをパノラマムービーに組み込んでオブジェクト化することで、WWWを通してフォトスペーシャルは画像を体験させることが可能になるのです。OLiVRは、エレクトリックコマース用のサーバ技術を開発している会社でした。イスラエルの会社です。Live Pictureはマルチレゾリューションデジタルネットワークイメージング技術を作ったサーバを実現できます。Live Pictureはとてもインターナショナルな会社です。

松尾 あなたはApple Computerの規模を何倍にも伸ばした実績があります。Live Pictureを同じように成長させることは可能ですか。

スカリー 1988年にはアップルジャパンのビジネス規模は非常に小さかったのです。2600万ドルしか売り上げがありませんでした。4年後、日本の市場は10億ドル以上になりました。これは非常に優れた技術があり、掘り下げられたマーケティング戦略があったからです。その当時の日本の優れたスタッフは今ではライブピクチャー・ジャパンの関係者になっています (日本法人社長の大西氏がそうだ) 。同じような成功をライブピクチャー・ジャパンも収めることができると信じています。

松尾 コンシューマー向けの製品とサーバ製品の比率はどう持っていく予定ですか。

スカリー LivePixに使われている技術は世界最高のものです。35ミリフィルムと同などの高品質の画像をリアルタイムで扱うことができる。ですから、日本でのLivePix のポテンシャルは非常に高いと考えています。ほとんどのメジャーなプリンタがこの技術をサポートしてくれます。一方、サーバ製品は1998年にならないと日本では展開しないので、最初はコンシューマー向けで立ち上がることになります。LivePix、RealSpace Tools、PhotoVistaがまず来ます。しかし、サーバ製品もすばらしいので、理想的なポートフォリオといえるでしょう。

松尾 個人的にはどんなコンピュータを使っていますか?

スカリー 何をするかによりますね。去年はMacを4台買いました。デスクトップではMacを使っています。ノートは、ThinkPadを使っています。

松尾 PDAは?

スカリー PDAはPsionですね。

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