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「負け惜しみではなく、晴れやかな意思決定」――孫社長、SprintとT-Mobileの“交渉決裂”に言及

» 2017年11月06日 17時57分 公開
[ITmedia]

 「99%の人には負け惜しみと思われるかもしれないが、晴れやかな意思決定をした」――ソフトバンクグループの孫正義社長は11月6日、傘下の米SprintとT-Mobile(独Deutsche Telekom傘下)の統合協議が破談したことを受け、決算説明会でこう話した。

photo 決算説明会の動画より

 SprintとT-Mobileは4日(米国時間)、経営統合の交渉を終了したと発表した。孫社長によれば、Deutsche Telekomとは統合後の経営権をめぐり意見が対立。「単独とはいかないまでも、対等なパートナーとして合併に臨んだ」(孫社長)が折り合いがつかず、「Sprintが米国市場で戦略的に重要」と判断し、孫社長から交渉終了を申し入れたという。

 孫社長がにらむのは、IoT(Internet of Things)時代が本格到来する5〜10年後の米国市場だ。ソフトバンクは昨年、英半導体企業Arm Holdingsを買収。Armアーキテクチャのチップは、全世界のスマートフォンの99%、車載情報機器の95%――など大きなシェアを占める。孫社長は、将来的にArmがIoTデバイス向けに約1兆個のチップを出荷し、その多くが米国に“ばらまかれる”と説明する。

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 「人間同士の通信では米Verizon Communicationsが圧倒的に先行し、Sprintは(契約者数で)第4位。しかし人間とモノ、モノとモノをつなぐIoTを考えると、われわれは有利な立場にいるのではないか」(孫社長)

 ソフトバンクは昨年、米人工衛星ベンチャーのOneWebにも出資。地球の周囲に900基の人工衛星を浮かべて電波を飛ばし、光ファイバー並み(上り50Mbps/下り200Mbps)の通信速度で、地球上どこでもネットにつながる状態を目指している。

 「(ArmとOneWebは)他社がまねしたくても“買えない”武器。Sprintを単なる携帯電話の通信会社ではなく、全く異なる次元で差別化し、新しい顧客獲得につなげることができる」と孫社長は豪語する。ソフトバンクは「ビジョン・ファンド」(10兆円ファンド)を設立し、直近半年間で20社に大型投資をしている。「(投資した)ほとんどの会社が無線通信を使う。その中核にある通信インフラは欠かせない」

 孫社長は「Sprintの経営権を維持することでグループ全体の利益最大化を図れる。単なる価格交渉ではなかった」と強調。さらにSprintの株式を追加取得し、「(持ち株比率を)85%ギリギリまで買い進め、意思を明確にしたい」と語った。

 ソフトバンクグループが6日発表した2017年4月〜9月期の連結業績は、売上高が4兆4111億(前年同期比3.3%増)、営業利益が8748億(同35.1%増)だった。純利益は1026億(同86.6%減)。アリババ株式の売却契約に伴うデリバティブ関連損失が影響したという。

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