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シャープの東芝PC事業買収に見え隠れするホンハイの意志(3/3 ページ)

» 2018年06月25日 16時38分 公開
[本田雅一ITmedia]
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鴻海傘下で「TOSHIBA」は復活するか?

 鴻海はシャープ傘下となる東芝クライアントソリューションに関して、その全社員の雇用を守った上で、独立した組織での事業展開を行っていくという。東芝・青梅事業所を基礎とする同社には、数多くの技術・設備が残っており、今後も製品開発を行う力は十分に残っていると思われる。

 東芝という栄光のブランドを支えてきたエンジニアたちが、シャープ傘下でモチベーションを失うのではないかとする見方もあるが、必ずしもそうではないと思う。経営危機にあったシャープが復活への道を歩んでいるが、鴻海はシャープの自主性を重んじているように見える。東芝クライアントソリューションを鴻海が直接取得するのではなく、シャープという日本の組織を通じていることからも、そうした意図を感じる。

 今回の買収発表で知られるところになったように、鴻海のPC事業は主にサーバやデスクトップPCといった、比較的シンプルな構造の企業向け製品においてグローバルのシェアが6割近くに達するといわれている(他社ブランド製品を含む)。

 当然ながら、そうした製品の販売ルート、あるいは企業向けコンピュータ製品メーカーとの協力関係、それにMicrosoftやプロセッサメーカーとの関係もある。ジャンルが異なるものの、スマートフォン、タブレット製品での部材調達力も高く、総合的な調達力は極めて高い。

 そうした中で東芝クライアントソリューションの開発力を生かせれば、現在は日本国内にとどまる事業領域を拡げ、海外市場への再参入にまでつなげることができるかもしれない。とりわけ、底堅い企業向けPC市場に特化するならば、大きな成果を上げる可能性は大いにある。

 というのも、単独では海外でのテレビ市場を攻略できなかったシャープが鴻海傘下で海外事業を立て直した結果、出荷数は倍増した。アクオス全盛期は海外事業での損失を国内事業の収益で埋めていたが、現在は海外事業を健全に伸ばすことで国内外の収益性を高めている。

 そして、海外におけるシャープのテレビ事業、ネットワーク家電などの事業戦略を担当しているのが、ソニーでの海外事業経験が豊富で、VAIO事業やテレビ事業を率いた経験がある石田佳久副社長兼共同CEOである。

17年9月に開催された「IFA 2017」で登壇を待つシャープの戴正呉会長兼社長(左、当時は社長)と副社長兼共同CEO、欧州代表の石田佳久氏(中、当時は欧州代表)

 石田氏は現在も多くの役割をこなしており、東芝クライアントソリューションの経営に直接関わるかどうかは分からない。しかし、東芝とシャープが持つ国内法人営業のネットワークに加え、“TOSHIBA”製PCの海外でのブランドバリューに、主にコンシューマー向けでVAIO黄金時代にソニーのPC事業を率いた石田氏の経験や人脈を重ね合わせれば、この先は大きな展望を抱くことができると思う。

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