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AIは“美しさ”を感じるか ディープラーニングの先にある未来これからのAIの話をしよう(美意識編)(2/4 ページ)

» 2018年07月05日 06時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]
石川さん 石川CEO

石川 かなり簡単だと思います。この前、作曲家は中田ヤスタカ型と秋元康型に分かれると、機械学習のエンジニアと話していました。中田ヤスタカ型は天才肌で、自分でこれが良いと思ったものを作曲する。秋元康型はメロディラインなどを分析して、こういう曲であればヒットするという型が出来上がっている。

―― 小室哲哉全盛時代に宇多田ヒカルが彗星(すいせい)のごとく現れたとき、衝撃を受けたのを覚えています。人工知能だったら「Automatic」のすごさを理解できたのか。ちなみに僕は何がすごいのか全く分からず「天井低っ!」(PVの映像)ぐらいしか思いませんでした。

石川 あくまで人工知能や機械学習をどういう目的で使うのかによりますね。連続する過去の歴史から飛び出たものは、人間がいまの価値観で判断しなきゃいけないという結論になるでしょう。

 「猫か犬か」みたいな判別であれば、単に見た目で判断してしまえばいい。ただ、絵画や音楽だと先ほど言ったように、作者の生まれた環境や国などの情報も必要になるかもしれない。どういうラベルを付ければいいのかという選択に、主観が入る可能性はあります。

―― 主観は「美意識」を鍛えるためにも、「人工知能」を作る上でも重要なキーワードだと考えています。ここで、あるCTスキャン画像を見てほしいのですが。米ナショナル・パブリック・ラジオで紹介されたものです。何か変ではありませんか。

画像 CTスキャン画像をクリックして拡大すると何かが見える(米ナショナル・パブリック・ラジオより

山口 そうですね。CTスキャン画像の中にゴリラが映っている。

―― さすがです。放射線科医24人にこの写真を見せたところ、20人はゴリラが映っていることに気付きませんでした。

石川 あーっ、本当だ(笑)。

―― 専門家であるほど、そんなもの映ってるはずがないとバイアスがかかって異変に気付けない。でも、AIならゴリラに気付けるかもしれない。山口さんの著書では、同じ絵画を見た者同士が議論しあうことで「見えていなかったものが見えるようになる」という話が紹介されていました。他者の視点を得るのは、バイアスを壊すことと同義なのかなと。

山口 同じ絵画を見ても、人によって気付きは異なります。ただ、それが「美しい」という感覚にどこまでリンクしているかは正直分かりません。

 米国のメディカルスクールでは、全員がこうした“みる”講義を必ず受講するようです。それで医者の診断能力が上がるという。音楽では訓練すれば全ての楽器が聴き分けられるようになりますが、音楽の美しさを感じ取る能力との関係は分からない。

―― 画像認識の場合、こうした「見落とし」といえるような事象は起こりうるのでしょうか。

石川 異なる学習済みモデルのAIを用意すれば、同じ画像を読み込ませても違う解釈をする可能性は当然あります。

AIは直感型で音楽が得意?

山口 「人工知能とアート」といっても、音楽と絵画でも違いがあります。

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