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» 2019年12月12日 17時07分 公開

AIが「本当においしいラーメン店」を判定 頼りは口コミ、偽レビュー排除の仕組みを開発者に聞く

AIが都内の「おいしいラーメン店」をランク付けする──そんなサービスを、東大発のスタートアップが開発した。ネットのレビューの信頼度をAIが判定するという。開発者に狙いやサービスの仕組みを聞いた。

[安田晴香,ITmedia]
photo フェイクレビューの一例(TDAI Labより提供)

 昨今、情報サイトのレビューがフェイクだと疑う声が続出し、大きな問題になりつつある。大手ECサイトやグルメ系口コミサイトなどでは、報酬を得て高評価レビューをするサクラの存在などが指摘されており、消費者はどのレビューを信じていいのか難しい状態だ。

 そんなフェイクレビュー問題の解決に取り組んでいるのが、東京大学発のスタートアップ企業TDAI Labだ。同社はAIでレビューの信頼度をスコアリングするサービス「WISE REVIEW」を開発。そのAI技術を使い、信頼できるレビュアーから評価されているラーメン店をランキング化したWebサイト「AIが選ぶ本当に美味しいラーメン百名店 in 東京 2019」を11月に発表して、「AIがランキングを選ぶのか」「面白い試み」などと話題になった。

photo 「AIが選ぶ本当に美味しいラーメン百名店 in 東京 2019」公式サイト

 ランキングの対象は都内のラーメン店で、「Google マイビジネス」にひも付くレビューを分析。2019年1月1日以降にレビューが100件以上投稿された店舗と、レビュー履歴が5件以上の個人のレビュワーに絞り、約6万件のレビューをAIで解析した。

 レビューの星の数や文章を、ネットワーク分析や自然言語処理技術を用いて分析し、その信頼度を算出。サクラや不当に低評価のレビューをするアンチなどを、自動検知できるようにした。

 具体的にはまず、レビュワーの評価履歴を見て、これまでどのようなレビューをしているかを確認する。次に、レビュワー同士の投稿内容を比較することで、極端な評価をしている人がいないかをチェック。中にはbotによる投稿もあるため、短時間に大量のレビューを投稿していないか、不自然な文章ではないかなども判断基準にする。これらの情報を基に、信頼できるレビュワーかどうかを判定する。

 最終的に、AIが信頼できると判断したレビューを「WISE SCORE」として点数化し、それを基にランク付けした「WISE SCOREランキング」を算出。Googleのレビューを基に順位付けした「単純平均ランキング」で上位にいても、WISE SCOREランキングで極端にランクが低い店は、信ぴょう性の低いレビューが多いとAIが判断したことになる。

photo 「WISE SCORE」「単純平均ランキング」の他、信頼できるレビューの割合も確認できる
photo 実際の口コミも閲覧可能

ダンサーの経験がサービスのきっかけに

 この仕組みを開発したTDAI Labの福馬智生社長は、現役の競技ダンサーでもある。そんな自身の経験が、AI研究やサービスの開発にもつながっているという。

photo TDAI Lab 福馬智生社長

 「競技ダンスは点数が付くので、他のペアに負けることもあります。受験やテストのように分かりやすいものではなく、芸術性という抽象的なものが点数化されてしまう。こうした経験から『モノの価値』に興味を抱くようになりました」(福馬社長)

 16年、所属する東大・鳥海研究室発のスタートアップとしてTDAI Labを設立。工事現場の検査作業におけるAI活用や自動運転などにも興味を持っていたが、18年に参加した国際会議「NeurIPS」で転機が訪れた。最新のAI研究や他の研究者との議論を通して、どうすれば人がAIを信頼し、AIを受け入れる世の中にできるのか、これまで以上に考えるようになった。

 そこで、AIがモノの価値を判定できれば、人の日常生活で助けになるのでは――とひらめいたという。モノの価値を計る1つの指標でありながら、信頼性の見極めが難しいレビューの判定に目を付けた。

 フェイクレビューがまん延すると、消費者は高い評価にだまされて質の悪い商品を買うケースが増える。店側も、不当に低い評価を付けられると、客離れにつながってしまう。

photo 消費者と店側、両者に機会損失が発生

 「ただし、ランキング外の店舗が『おいしくない店』というわけでは決してありません」と福馬社長は続ける。もともとレビュー数の少ない“隠れ家”的な店はそもそも対象から外れるからだ。

ECサイトやマーケティングリサーチへの導入も視野に

 今後は本格的な事業化に向けて、WISE REVIEWのアップデートを進めていく予定だ。

 ECサイトのレビューやマーケティングリサーチのアンケートのシステムなどへの導入を想定する。実際に商談が進んでいる企業もあるという。

 「単に人がしていたことをAIが代替するのではなく、AIの活用によって、人が今まで知り得なかった情報を知り、できなかったことを可能にする――そんな世の中にしていきたいです」(福馬社長)

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