ITmedia NEWS >

おとり捜査でビットコイン追跡、児童ポルノ闇サイトを暴いた国際捜査の手法この頃、セキュリティ界隈で

» 2020年01月09日 16時51分 公開
[鈴木聖子ITmedia]

 世界中のユーザーを相手に児童虐待の違法ビデオを販売していた闇サイトが、米国や韓国の連携捜査によって摘発された。匿名性が高いダークネットやビットコインの利用は、犯罪者が身を隠すための常套手段。だが捜査当局はおとり捜査を通じてビットコイン取引を追跡し、ダークネットサーバの所在を割り出して、サイト管理者とユーザーを追い詰めた。

 この事件ではサイトを運営していた韓国人のソン・ジョンウ被告(23)が逮捕・起訴され、同サイトから動画を購入していたユーザー337人が韓国や米国、欧州、ブラジルなど世界各国で逮捕されている。

 米司法省によると、摘発された闇サイト「Welcome To Video」は2015年6月ごろからダークネットで運営され、会員向けに児童虐待動画をダウンロード販売していた。会員が動画をアップロードすることも可能だった。

photo

 同サイトへは、ユーザーのIPアドレスが特定されないTorブラウザ経由でしかアクセスできない。料金の支払いは、ユーザーが身元を明かさずに送金できるビットコイン取引を利用していた。ユーザーが同サイトに会員登録すると、それぞれ専用のビットコインアドレスを割り当てる仕組みだった。

 だがその取引が、同サイトを摘発する手掛かりになった。米内国歳入庁(IRS)は覆面捜査官を同サイトに登録させて動画を購入し、ビットコイン取引の流れを追跡していた。

 CNNが2019年10月に報じた記事によると、Welcome To Videoに登録した覆面捜査官は2017年9月から2018年2月にかけて、指定されたアカウントにビットコインを送金した。その流れを追跡した結果、送金した金は毎回、別のビットコインアカウントに転送されていることが判明。転送先は、ソン被告の電話番号と電子メールアドレスを使って登録された、同被告本人のアカウントだった。

 さらに、捜査官がWelcome To Videoのホームページで右クリックしてソースコードをチェックしたところ、IPアドレスが隠されないまま表示されているのを発見し、このアドレスをたどって韓国のソン被告の自宅を突き止めた。

 米国と英国、韓国の捜査当局は2018年3月5日、ソン被告を逮捕して、同サイトの運営に使っていたサーバや、25万本以上の動画を押収した。

 押収したサーバの情報は世界38カ国の捜査機関と共有され、ユーザー337人の逮捕につながった。米国では家宅捜索を受けて自殺したユーザーもいた。

 「ビットコインは一般的には安全性が高いという評判だが、現実は少し違う」とCNNは指摘する。ここ数年の間に、捜査当局がビットコイン取引を分析できる高度なツールが開発されているといい、「こうしたツールがどれほど進化しているか、どれほど多くの情報を引き出すことができるかについては、あまり知られていない」と香港の専門家は語る。

 米連邦検察は「われわれは今後もダークネットの内と外の犯罪を追い続ける」と強調した。一方、専門家によれば、犯罪者側も捜査当局の動きを見越して、ビットコインから別の仮想通貨に切り替えるなど、追跡逃れの新たな手口を探っている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.