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新型コロナウイルスの影響、ネットでも 便乗ウイルス出現、感染力増す偽情報この頃、セキュリティ界隈で(1/2 ページ)

» 2020年02月04日 09時51分 公開
[鈴木聖子ITmedia]

 新型コロナウイルスの影響が、日増しに大きくなっている。ネット上では騒ぎに便乗してコンピュータウイルスに感染させようとする手口が浮上し、SNSでは偽情報や不安をあおるような投稿が、まさにウイルス的な伝染性で拡散する。企業には、社員が出勤できなくなった場合を想定した対策も求められている。

 「生物ウイルスの流行が、コンピュータウイルスを拡散させる手段として使われている」と伝えたのは、米IBMのセキュリティ部門X-Force。同社のブログによれば、新型ウイルスについての注意喚起を装って、マルウェアの「Emotet」に感染させようとする日本語のメールが出回っているという。問題のメールは実在する京都の保健所の名をかたって、デマも交えて不安をあおり、感染予防対策などと称する添付ファイルを開かせようとする内容だった。

 Kasperskyによれば、新型ウイルス騒ぎに便乗しようとするマルウェアはEmotetにとどまらない。ウイルスに関する最新情報の提供や、身を守る方法についての解説に見せかけて、PDFやMP4、Wordなどのファイルを開かせようとする手口も見つかっている。こうしたファイルにはトロイの木馬やワームなどが仕込まれていて、データの破壊や改ざん、複製、コンピュータやネットワークの業務妨害といった被害を引き起こしかねないとKasperskyは警告する

photo Kasperskyのブログ

 また、米セキュリティ機関SANS Internet Storm Centerによれば、「coronavirus」の名称に関連したドメインを登録する動きも出始めている。そうしたドメインは、寄付集めを装った詐欺や、関連用品の不法販売などに使われる恐れもある。

 ネットやSNSに投稿される虚偽情報に対しては、当局やネット企業が取り締まりに力を入れている。マレーシアでは、新型コロナウイルスに関するフェイクニュースをFacebookにアップロードしたり、Twitterで共有したりした疑いで4人が逮捕された。容疑者は家宅捜索を受け、スマートフォンやSIMカードなどを押収されている。

 だが、そうした情報を拡散させているのは無知なユーザーや悪意のあるユーザーばかりとは限らない。米誌The Atlanticは、ハーバード大出身の公衆衛生科学者が不用意なツイートで間違った情報を広めてしまったという話を紹介していた

 それによると、米首都ワシントン在住のこの研究者は、医学誌に掲載されていた論文の中で、新型ウイルスの感染力の強さついて推定した数字に着目した。論文の筆者は、まだ不確かな部分が多いと断っていたが、研究者はセンセーショナルな表現で、この数字についてツイートした。

 ただでさえ、ウイルスに対する不安が高まり、陰謀説や恐怖をあおるような動画(実は新型ウイルスとは無関係)が飛び交っていた真っ只中。ハーバードというブランドのついた研究者のセンセーショナルな投稿は、瞬く間に注目を集め、フォローやリツイートが激増した。

 ところがこの研究者が投稿した内容には誤りがあった。さらに、引用された論文はその後、肝心の感染力に関する数字を訂正して大幅に低い推定としていた。別の専門家がそうした誤りを指摘したが、猛烈な勢いで拡散する問題のツイートを食い止めることはできなかったという。こうした現象は、偽情報でもいったん放ってしまえばまさにウイルス的な感染力の強さで拡散するSNSの現実を浮き彫りにしている。

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