マンガの中では、5Gで高速通信を実現できる理由として、「高い周波数帯の利用」と「複数のアンテナの利用」を挙げました。
周波数が高い方が多くの情報量を載せられますが、実は5Gが目指す速度である数十Gbpsの通信には、今も4G(LTE)で利用している数百MHzの周波数帯で十分ともいわれています。実際に、中国などは850MHzなど、4Gと同程度の周波数帯を5Gに割り当てています。
ではなぜ日本では4Gよりも高い周波数帯を5Gに割り当てているかというと、低い周波数帯については4Gなど既存のサービスに割り当てていて、5Gに割り当てる余裕がないから。また、高い周波数帯では通信に広い帯域を割り当てられるメリットもあり、同時多接続の実現にも一役買っています。
もう一つの「複数のアンテナの利用」は「Massive MIMO」(Massive Multiple-Input and Multiple-Output)という技術のこと。電波は波の性質を持つため、同時刻に重ねることができます(海面を見ているとたくさんの波が重なっている様子が観察できますよね)。送受信の双方が複数のアンテナを持ち、それぞれの波で情報を伝えることで効率的に情報を伝達しようというのがこの技術です。MIMOという技術自体は4GやWi-Fiでも用いられていますが、5Gではこれらよりさらにアンテナを増やすなどして効率性を上げようとしています。
マンガ内では説明しませんでしたが、5Gには「低遅延」という特徴もあります。これは通信プロトコルを見直して、送信するデータの最小単位(TTI:Transmission Time Interval)を小さくし、さらに送る間隔を短くすることなどで実現しています。また、端末と基地局間の改善とは別の取り組みとして、低遅延で応答してほしいサーバ機能を基地局近くまで持ってくることで通信経路を短縮する「モバイル・エッジ・コンピューティング」という技術も、自動運転車のリアルタイム応答などに有望視されています。
このような高速・低遅延のモバイル通信が実現すると、例えば自動運転車のリアルタイム応答システムや、クラウド側に処理サーバを置くクラウドゲーム、4K解像度の動画ストリーミングや、より高い解像度が必要な場合もあるAR・VR動画のストリーミングなどが快適に行えるとされています。
同時多接続という点では、街中に今より多くのIoT機器が設置されて、それらがさまざまなセンシング情報をサーバにリアルタイムで送るということもできるようになりそうです。
一方で、5Gは商用サービスが始まったばかりということもあり、マンガや上に挙げたような応用例がすぐに出てくるかというと、まだそのような状況ではありません。
5Gのプランを契約しても、3キャリアとも5Gの基地局を増やしている真っ最中のところで、つながる場所はまだまだ多くはありません。
「とにかく5Gを早く使ってみたい」という方以外は、自宅や自分の行動エリアが5Gエリアに入ってから契約しても遅くはないでしょう。
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