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» 2021年02月01日 07時00分 公開

“まるで本物”日本刀、花札の3DCGを作る少数精鋭集団 こだわりでリアルさ追求 「目指すはナンバーワン」(1/2 ページ)

まるで本物のような3DCGを作る制作集団がいる。名前は「Bunnopen」(ブンノペン)。伝統工芸や文化にフォーカスした3DCGを手掛ける彼らに、結成の背景や制作の過程を聞いた。

[安田晴香,ITmedia]

 刃先が光の反射で鋭く光り、滑らかに反った刀身に金の紋をあしらった鞘(さや)――古くは戦で使われ、贈答品や家宝として受け継がれてきた、日本の伝統工芸品である日本刀。そんな日本刀を3DCGで極限までリアルに再現したモデルデータがある。

 これは、3DCGデザイナーやプログラマー4人の制作集団「Bunnopen」(ブンノペン、名古屋市)が制作したもの。ゲームやVR用の素材として、Unreal EngineマーケットプレイスやUnityアセットストアで販売している。

 日本刀以外も花札、百人一首などユニークなモデルを制作。花札は絵柄の裏側の紙の艶感まで表現され、百人一首では通常の読み札と取り札の他、金箔に仕上げたセットを用意。どちらも札を並べる畳のデータも含まれている。映画やアニメーション、ゲームなど、3DCGは世の中にあふれているが、いずれも目を見張るものがある。

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photo 花札や百人一首(画像は金箔に仕上げたもの)のモデルも制作

精巧な3DCG作りに取り組む裏側には、メンバー同士でときに口うるさいほどの指摘を行うリアルさへのこだわりがあるという。

 伝統工芸や文化にフォーカスした3DCGを手掛ける理由、制作の過程をBunnopen代表の井本直宏さん、3DCGデザイナーの大坪晃輔さん、森光洋さんに聞いた。

伝統工芸の“正しい”3DCGはごくわずか

 もともと名古屋市立大学芸術工学部の学生だった井本さんたち。当時から仲間内で3DCGやゲームを制作していた。ちょうどその頃、2011年3月に東日本大震災が発生。多くの企業が採用活動の見直しを行う中で「企業に頼らず自分たちの手で事業を生み出せないか」という思いが芽生えていったという。

 ただし、仲間内で趣味として行っていた活動をいきなり事業化したところで軌道に乗るかは分からない。すぐに法人化するのはリスクが高いと考え、3DCGデザイナーやプログラマーなど個人事業主をまとめる組織として「Bunnopen」を2012年に立ち上げた。

 伝統工芸や文化に注目するきっかけは「世の中に3DCGを始めデジタルコンテンツは一杯あるのに、その国や地域発祥のものを正しく表現したものが少ない」という気付きだった。日本刀の3DCG「Katana」を制作した大坪さんは「例えばゲームのアイテムで“日本刀”が出てきたとき、刀の専門家ではない自分が見ても形や色が日本刀に見えないことがよくあります」と語る。

photo Bunnopen代表の井本直宏さん

 伝統工芸などの3DCGが少ないということは、他社や他のデザイナーにまねされにくく、組織を差別化できるのではという思惑もあった。

 「実物を正確に再現した3DCGを作り世界に公開することで、多少なりとも文化の正しい理解につながるのではと思いました。日本で生まれ育ったわれわれには、特に日本発祥のものを知っているという自負があります。他にはできない最高の3DCGを作りたいと思いました」(井本さん)

 そこで組織をBunnopenと命名。Bunnopenの「Bun」は「文化」、「pen」は筆記具を表し、「文化を描けるような集団を目指す」という意味を込めたという。

photo Bunnopen公式サイトより
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