Innovative Tech
皮膚に貼って超音波検査できるステッカー、米MITなどが開発 どこにいても胎児をエコーで見られる未来へ
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米MIT(Massachusetts Institute of Technology)、米Makihata Engineering、米Mayo Clinicの研究チームが開発した「Bioadhesive ultrasound for long-term continuous imaging of diverse organs」は、体内の超音波画像を取得できる、皮膚に貼るステッカー型デバイスだ。超音波プローブなどの音波を送り込む装置を必要とせず、皮膚上にこのステッカーを貼ることでその箇所の下の臓器をエコー検査できるという。
これまでの超音波画像診断では、まず技術者が患者の皮膚に液状のゲルを塗布し、プローブをゲルに押し当てると、音波を体内に送り臓器に反響してプローブに戻り反響した信号が画像に変換される。
超音波画像診断には病院や診療所にしかない、かさばる特殊な装置が必要だ。加えてプローブを患者に長時間当て続けなければならない。さらに長時間の撮影が必要な患者のために、ロボットアームにプローブを固定する方法もあるが、ゲルが流れ時間がたつと乾燥してしまい撮影に支障が生じる。
これらの課題を解決するために、今回はより手軽に長時間の超音波画像診断を可能にする皮膚に貼るステッカー型デバイスを提案する。デバイス全体の大きさは、横が約2平方センチ、厚さが3ミリメートルで分厚い切手サイズだ。強い粘着力を持つため、皮膚に一度貼り付けると激しい運動をしても剥がれず画像診断を続けることができる。
このデバイスの接着層は、伸縮性のある粘着層と硬いトランスデューサーの配列の組み合わせで構成される。上下2枚の薄いエラストマーでできており、その中に固形のハイドロゲルが封入されている。下部のエラストマー層は皮膚に密着するように設計され、上部の層は硬いトランスデューサーの配列に密着するように設計されている。
実験では参加者15人を対象に、首、胸、腹部、腕など、体のさまざまな部位にデバイスを貼ってもらい画像を取得した。その結果、最大48時間連続で血管、筋肉、心臓、消化管、横隔膜、肺などのさまざまな臓器を鮮明に映し出した。この間、参加者はジョギングやサイクリングなどのさまざまな運動を行ったが、問題なく画像の取得が行えた。
止まった状態で受けるこれまでのエコー検査と違い、動きながらの検査が可能なため次のような新しい知見が得られた。例えば、座っているときと立っているときの主要な血管の直径の変化、運動時に心臓がどのように変化するか、ジュースを飲んだときの胃の膨らみ方、運動による筋肉の損傷など、このように装着し続けられる利点により柔軟な活用法を示唆した。
現在の設計では、反響した音波を画像に変換する機器にこのデバイスを接続する必要があるが、例えば、心臓をモニターする心電図シールのように病院で患者に貼ることができるため、技術者が長時間プローブを固定せずに内臓を連続的に画像化できるなど、今の技術に適応することができる。
将来的にはワイヤレスで動作させることを目指しており、ワイヤレス化が可能になれば、患者は病院や薬局でデバイスを購入し自宅で貼り付けられ、音波データが送られたスマートフォンが画像を生成し機械学習モデルが診断する未来を想定している。日常的に腫瘍の進行や子宮内の胎児の発育をモニタリングするために使用されることも考えられるだろう。
Source and Image Credits: Chonghe Wang, Xiaoyu Chen, Liu Wang, Mitsutoshi Makihata, Hsiao-Chuan Liu, Tao Zhou, and Xuanhe Zhao.“Bioadhesive ultrasound for long-term continuous imaging of diverse organs” SCIENCE 28 Jul 2022 Vol 377, Issue 6605 pp. 517-523 DOI: 10.1126/science.abo2542
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
楽天モバイル、KDDIローミングは「10月以降も継続」と再告知 「現在も詰めの協議」
-
2
くら寿司、「ちいかわ」コラボ中止 従業員による不正行為判明で
-
3
配布前の「ちいかわ」グッズがメルカリに? くら寿司コラボ第2弾、初日から“内部犯”の臆測呼ぶ 第1弾に続き
-
4
「スーパーリアル麻雀 VR」でゲーセン通いの日々を思い出したマンガ家、ご褒美シーンの“限界突破“に驚愕
-
5
OpenAI、休眠サイトへの自社AIエージェント書き込みを認め、非公表の理由を説明
-
6
犬を飼うと認知症リスク48%減 東京に住む1万人以上を調査 国立環境研究所や東大など
-
7
AIで「今日着た服」を自動判定 1日の“服コスパ”が分かるシステムがスゴイ
-
8
SEGAそっくりのロゴで「MAGA」――トランプ政権公開のWebゲームが物議 移民送還などを題材に 【追記あり】
-
9
ダークチョコ(カカオ85%)を毎日3週間食べる→ネガティブ感情が減少 70%では変化なし 韓国での研究結果
-
10
RIZAP社員、私用AIに顧客の個人情報入力 氏名や疾患、保険証番号など……同社が謝罪
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR