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トヨタ社長交代、なぜ豊田章男氏はトップの座を降りたのか 語った「クルマ屋の限界」とは(1/2 ページ)

» 2023年01月27日 10時30分 公開
[山川晶之ITmedia]

 トヨタ自動車が1月26日に新人事を発表。4月1日から、現レクサスとGRのトップを務める佐藤恒治氏が社長に、現社長の豊田章男氏は代表取締役会長に就任する。同社は16時からライブ配信にて、豊田氏の口から社長交代に至った経緯などを説明したが、そこで語られたのが「クルマ屋の限界」というフレーズだった。

(左から)豊田章男氏、佐藤恒治氏、内山田竹志氏

 自動車業界は100年に1度の大変革期を迎えており、電動化、コネクテッド、モビリティサービスの波が押し寄せている。豊田氏も2018年のCESにて「トヨタをモビリティカンパニーへと変革する」と宣言し、ハイブリッドだけでなくEV、FCV(水素電池自動車)車の投入、モビリティサービス専用車「e-Palette」構想、サブスクリプションサービス「KINTO」の提供、実験都市「Woven City」の建設など、モビリティカンパニー化を牽引してきた。

 その一方で、豊田氏は大の車好きとしても知られており、国際C級ライセンスを持ち、「モリゾウ」というプロのレーシングドライバーの一面を持つ。自らハンドルを握るマスタードライバーとして、トヨタ車の味付けにも深く関与しており、スポーティーな走りができる車種が増えたのも同氏の影響が大きい。いわゆる「カーガイ」のキャラが色濃い同氏が配信で何度も口にしたのが、先ほどの「クルマ屋の限界」というキーワードだ。

 「クルマ屋だからこそ、トヨタの変革を進められた」「執行トップでもあるし、マスタードライバーでもあり、商品化決定会議の議長でもある。内山田会長とともに商品づくりをしてきた」としつつも、「どうしても最後はクルマ屋の枠を出ないクルマづくりに向かっていたと思う。『I Love Cars』の情熱が強いゆえに、デジタルかつ電動化、コネクティビティに関して私はもう古い人間だ」「未来のモビリティはどうあるべきかという新しい章に入ってもらうためには、私自身が一歩引くことが今必要ではないか」(豊田氏)との判断に至ったという。

佐藤氏はどんな人物か

 そんな豊田氏の後を継ぐ佐藤氏だが、選任には4つの理由があるという。1つ目は「トヨタの思想、技、所作を身に着けようと現場で必死に努力してきた人物。トヨタのトップはその体現者であって欲しい」というもの。もう1つは「クルマが大好きだから」だと豊田氏は語る。

レクサス初のBEV専用モデル「Lexus RZ」テスト走行時の動画。豊田氏の横には佐藤氏の姿が

 佐藤氏は、エンジニア畑出身で、カローラやプリウスの部品開発に携わったのち、2003年からレクサスを担当。「LEXUS LC」のチーフエンジニアなども務めた。「ドライバーを笑顔にするクルマを作るのが大好き」といい、マスタードライバーの豊田氏と向き合い続けてきた人物だ。「東京オートサロン2023」では、佐藤氏が最近勢いで「AE86」を購入し、そのことばかりFacebookに投稿していると豊田氏にバラされた一幕もあった。

佐藤氏は最近AE86を購入したという

 これに加わるのが「若さ」と「チーム経営」だ。佐藤氏は53歳、豊田氏が2009年に社長に就任したときと同じ年齢で、「正解がわからない時代に変革を続けるにはトップが現場に立ち続ける必要がある。それには体力と気力と情熱が欠かせない」(豊田氏)という。また、佐藤氏のもとには優秀なチームが揃っており、「一人で経営しようとせず、チームで経営して欲しい。彼だけではなく、多様な個性を持った多くの仲間を13年間育ててきた。未来を創るイノベーションは、多様な個性が同じ目的に向かった時に生まれると思う」と持論を述べた。

 佐藤氏率いる新チームのミッションは、豊田氏が成し遂げきれなかった、トヨタをモビリティカンパニーに“フルモデルチェンジ”させること。「ここまでは私の個人技で引っ張ってきたが、今後トヨタがさらに成長していくためには、私からちょっと離れたところでチームが適材適所で力を合わせてやっていくことにかけたい。若い新チームにぜひともご期待いただきたい」(豊田氏)と期待を寄せた。

 交代後、豊田氏は佐藤氏を中心とした新チームのサポートに徹し、社内では取締役会の議長とマスタードライバーに注力。クルマがトヨタ、レクサスの味になっているかを今後もチェックするという。社外に対しては、トヨタだけではない自動車産業全体の支援に回る。

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