同展示会のセミナーに登壇した東京医科歯科大学の臨床教授で、自らもデジタル医療機器を開発するスタートアップ企業アイリス(東京都千代田区)の共同創業者である加藤浩晃氏は「現実的に日本の医療現場は早急なデジタル化が必要」とし、その背景に「医療提供の格差」や「高騰する医療費」「医療者の労働環境」という3つの課題があると話す。
特に医療者の労働環境は近いうちに大きな問題に直面する。臨床医の総数は約32万人だが、平均年齢は50.1歳、診療所は60.2歳と患者と同じく高齢化が進んでおり、しかも24年4月からは医師の労働時間の規制が厳しくなり、医師不足に陥る可能性が高いのだ。
「それらの解決にはデジタルの力を借りることが不可欠であり、なおかつオンライン医療ファースト時代に向けて対応を進めなければならない」と話す。どこにいてもオンラインで診療が行える状況で、真のかかりつけ医になるには、いち早くデジタル化へ動き出さねばならない状況になっている。
白書「デジタルヘルストレンド」の編著に毎年関わり、「医療4.0(第4次産業革命時代の医療)」の著者でもある加藤氏は、最新の医療DXトレンドとして、遠隔医療・オンライン診療、PHR(パーソナルヘルスレコード)、医療AI、治療用アプリを挙げている。また、医療現場の医療AIは第2世代に入り、AIが診断を補助する機器もすでに登場していると説明する。
アイリスが開発する「nodoca」は、AIを搭載した内視鏡でのどから病気を見つけ出す医療システムで、AI医療機器を用いる診断への新機能・新技術区分で日本初の保険適用を受けている。nodocaを使えばインフルエンザの特徴を見つけ出すといった、熟練医でなければ難しかった診断が若い医師にもできるようになり、現場の医師の負担と診療時間を減らすことにもつながるかもしれない。
患者のヘルスデータを平時から収集する、スマホやスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスが普及しているが、医療機器からも常時データを収集しようと、ネットワークに接続する医療機器「IoMD(internet of Medical Device)」の開発が世界で進んでいる。
こうしたビッグデータをAIで分析すれば、治療だけでなく病気の早期発見や未病対策にもなるかもしれないのだ。
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