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「当社なら必ず有意差を出せます!」 臨床試験を絶対クリアさせるサービスが登場し物議 意図を聞いた

» 2023年03月08日 21時00分 公開
[谷井将人ITmedia]

 「オルトメディコのノウハウを駆使すれば必ず有意差を出せます!」──そんなプレスリリースが3月7日に公開され、臨床試験を実施する意義と認証制度の信頼性を損なうのではとTwitter上で物議を醸している。

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 プレスリリースを出したのは臨床試験の受託事業を展開しているオルトメディコ(東京都文京区)。「ヒト臨床試験有意差保証プラン」の内容は特定保健用食品や機能性表示食品などの臨床試験において必ず有意差を出すというもの。同様のサービスは業界初としている。

 プランの対象になるのは食品の「体脂肪を減らす機能」「中性脂肪を抑える機能」「コレステロール値を改善する機能」「尿酸値を下げる機能」「健康な肝臓の機能を維持する機能」の5種類。オプションとして論文執筆代行や、機能性表示食品の届出代行サービスも提供する。

 臨床試験においては適切な実験計画や得られたデータの分析を基に、健康に与える効果を証明する必要がある。特定保健用食品の申請においては、提出する資料について「統計学的に十分な有意差を確認できるものでなければならない」とあることから、有意差が示せない場合は特定保健用食品としても登録されない。

 「有意差がある」とは、薬であれば開発した薬を使った集団と他の集団で薬効の指標を比較したときに、2つの集団に偶然では考えにくい差があること。ただし、本来は2つの集団に差がなくても、有意差が生まれることはあり得る。実験で得られたデータには必ずばらつきがあるからだ。つまり、本来は有意差があることだけでは効果の証明にはならない。

 一方、ヒト臨床試験有意差保証プランでは、有意差が検出されるまで試験をやり直すことで有意差を示し、論文にするという。

photo 有意差が出るまでやり直す

 Twitterでは「ネタ画像かと思ったらガチだった」「完全保証された有意差に意味はない」など批判的な意見が見られた。

 オルトメディコに、これらの反応について質問したところ、以下のような回答があった。

 「(臨床試験の失敗は)今回の試験結果としては有意差が出なかったという話。研究は重ねて続けていくものなので、1回で出なかったからといって諦めるのではなく、何回でもトライを繰り返すことで結果を確認すること自体は研究のやり方としては外れたものではない」

 有意差が出ないものを無理やり出させることはあるかとの質問には「有意差が出なかった理由はいろいろ考えられる。どうやれば有意差が出そうかを考えて試験デザインする。一回の結果を統計解析しなおして有意差を作り出すのではなく、もう一度試験をして、有意差が出るまで待つ」と答えた。

 メーカーから話を受けた時点で、有意差が出る可能性がないと思われる場合についても「初めから否定的に捉えるのではなく、最大限にどういった試験デザインがベストなのか検討して提案している」としている。

 試行を繰り返しても有意差が出なかった場合は「食品メーカーと相談しながら対応を考える」とした。これまでの経験では基本的に1度の臨床試験で有意差が出ているという。

 試行回数は報告するのか尋ねたところ、「有意差が出た試験のみを報告する」との回答が得られた。しかし、臨床試験の実施を登録するプラットフォーム「UMIN臨床試験登録システム」を見れば、実際に何回臨床試験が行われたかを確認することはできると答えた。

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